【違いついて解説】指定仮設と任意仮設

積算の基礎知識
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指定仮設と任意仮設の使い分け方法についてまとめました。

建設工事は現場条件に合わせた現地生産が基本です。

そのため、工事目的物を経済的に施工するためには適切な仮設計画が必須となります。

一方で、建設工事は請負契約で契約することが基本となるため、
「指定」と「任意」という約款上の原則のもと、「指定仮設」と「任意仮設」という契約上重要な考え方が存在します。

初めは難しく感じるかもしれませんが、一度正しく理解できればそこまで難しくはありません。

この記事を読んでいただければ、指定仮設と任意仮設の違いについてしっかりと理解して頂けると思います。

この記事は以下のことについて書いています。

・仮設とは
・「指定仮設」と「任意仮設」の使い分け
・仮設工を設計変更する際のポイント

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仮設とは

仮設とは工事目的物の施工のために必要となる仮設備のことです。

建設工事は現地条件に合わせた単品受注生産となるため、工事目的物の完成のために現場に設置する仮設備が必要となる場面が多く発生します。

例えば、掘削する際に土が崩れてくる可能性が高い場合は「土留め」が必要になりますし、人の背丈よりも高い位置の工事目的物を施工するためには「足場」が必要になります。

また、直接的には工事目的物の施工に関わらなくとも、現道の通行を迂回させるための「仮設道路」が必要になったり、河川を迂回させるための「仮回し水路」が必要になったりします。

規模が小さいところでは、現場に工事関係者以外の一般の方が入ってこないようにする「バリケード」や、工事について案内するための「工事看板(積算基準では標示板とされています)」なども仮設備です。

建設工事は現地施工が基本となるため、品質確保や安全管理の面から何らかの仮設が必要となる現場条件がほとんどです。

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「指定仮設」と「任意仮設」の使い分け

指定と任意の定義

「指定仮設」と「任意仮設」の違いを理解するためには、まずは指定任意という言葉が何を根拠に使われているかについて知っておく必要があります。

以降、分かりやすいように
指定
任意

で示させて頂きます。

指定任意が使い分けられている根拠については、工事請負契約約款に記載されている文章が元になっています。

総則第1条3項

仮設、施工方法その他工事目的物を完成するために必要な一切の手段(以下「施工方法等」という。)については、この約款及び設計図書に特別の定めがある場合を除き、受注者がその責任において定める。

公共工事標準請負契約約款(令和4年9月2日改正)ー 国土交通省(https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001499463.pdf

赤字で示した部分に注目してください。

上記の文脈より、

特別の定めがある場合=「指定」

それ以外=「任意」

とすることが受発注者間での原則とされています。

「設計図書」とは
仕様書
契約図面
現場説明書
現場説明に対する質問回答書
工事数量総括表
を含むものであり、
工事目的物の仕様や形状などを指示し、施工に求められる技術的な事項について規定したものです。

約款及び設計図書で指定されたもの以外の工事目的物を施工するための一切の手段については受注者がその責任において定めます。

例えば、工事目的物を施工するための仮設計画や、施工機械の選定、作業順序、工程管理方法などについても特別の定めがない場合は全て工事を請け負った受注者の任意です。

工事請負契約約款については、下記の記事で詳しくまとめましたので参考にしてください。

指定仮設とする場合

建設工事は多くが施工、工事目的物の引き渡しまでを請負う契約形態であり、特別の定めがない限りその手段については工事を請け負った受注者の判断に委ねられます。

一方で、発注する工事によっては仮設方法について指定がなかったことによって予期せぬトラブルに発展する恐れがあるため、発注者側で施工手順や仮設について指定しておいた方が良い場合があります。

具体的な例を挙げると以下の通りです。

・工事で設置する仮設備による第三者への影響が大きい場合

・工事発注をする部署が管理していない施設が近接している、もしくは直接的に管理をしていない場所で工事をする場合

・当該工事で設置する仮設物を工事終了後も引き続き使用する予定がある場合

上記は指定仮設についての考え方の例ですが、設計図書における指定仮設について定められた正式な文書が存在します。

下記に引用します。

5 適性な仮設工及び施工方法の選定

(1)工事の発注にあたって、次に示すような施工条件の仮設工については、設計図書において指定仮設とすること。

イ 河川堤防と同等の機能を有する仮締切の場合
ロ 仮設構造物を一般交通に供する場合
ハ 特許工法又は特殊工法を採用する場合
二 関係官公署等との協議等により制約条件のある場合
ホ その他、第三者に特に配慮する必要がある場合

(2)仮設工、施工方法を指定する場合には、事前に現地の調査を十分に行い、設計審査制度、経験豊富な技術者等の助言を活用するなどして指定内容を十分検討し、関係法令、関係技術基準・指針等に沿った施工の安全性に配慮した適切な内容とすること。

公共工事の発注における工事安全対策要綱 ー 建設省技調発第165号(平成4年7月1日)(https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/sgml/004/74000111/74000111.html

上記に該当するものについては、工事発注を担当する監督職員の権限のもと指定仮設とすることが望ましいです。

任意仮設とする場合

工事の仮設については工事請負契約約款で示されているように、特別の定めがない場合は「受注者がその責任において定める」つまり仮設方法についても任意で施工されるのが原則となっています。

一方、任意仮設として工事発注をしたからといって、発注者側が安全施工に対する監督責任を免れるわけではありません。

下記に発注者の責任について言及した裁判事例を引用します。

市は裁判の過程で、設計図書で指定しない仮設や施工方法などは、自主施工の原則で受注者が選択するものだと説明。発注者が施工方法などの選択について注文を付けることは許されないと主張した。

しかし裁判所は、石積み擁壁の根入れ位置が、設計図書では掘削溝の底面よりも深かったが、実際には底面まで達していなかったことを市の工事担当者が把握していたと指摘。自主施工の原則を前提としても、施工者に具体的な安全対策を指示せず、安全が確保されるまで工事を一時中止させる義務を怠ったとして、市の過失を認めた。

(中略)

さらに控訴審では、施工者から擁壁の崩落回避のための提案を受けながら、それを採用せず代替案も示さなかった経緯を指摘。市が具体的な指示をしなかった点だけで責任があるとはいえないとしながらも、市は仕事の完成を待つ立場にとどまらず、第三者に危害を及ぼす事態の回避に向け副次的・補充的な責任を負うべき立場にあると言及している。

工事現場の事故にも賠償命じる ー 日経XTECH(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/ncr/18/00121/020100001/)

受注者の任意で施工を進める場合においても、発注者側が安全施工に対する監督責任を免れるわけではありません。

ただし、発注者が安全施工に対する監督責任を免れるわけではないとは言っても、基本的に建設工事は「工事請負契約」であることを思い出してください

建設工事は施工完了、工事目的物の引き渡しまでを「請け負う」契約であり、その「手段」については工事契約をした受注者に委ねられます。

簡単な言葉で言い換えてしまうと、請け負わせる現場条件及び条件の明示に不備があった場合には監督責任が発生しますが、それ以外の場合は安全施工を実施する責任は全て受注者にあります。

発注時の条件明示が大切であること、現場条件の相違があった場合には協議をしなければならないことの理由です。

もしも、不安全な現場条件が明らかである場合には施工を認めてはいけません。

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仮設工を設計変更する際のポイント

設計変更ガイドライン

仮設工に限りませんが、設計変更は各発注者が出している「設計変更ガイドライン」を元に行います。

例として関東地方整備局のガイドラインについてリンクを張っておきます。
工事請負契約における設計変更ガイドライン(総合版)(令和元年9月)
(URL:https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000697185.pdf

設計変更が可能なケースについては以下の通りです。

(1)設計図書に誤謬又は脱漏がある場合(契約書第18条第1項の二)
(2)設計図書の表示が明確でない場合(契約書第18条第1項の三)
(3)設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際の工事現場が一致しない場合(契約書第18条第1項の四)
(4)工事中止の場合(契約書第20条)
(5)「設計図書の照査」の範囲を超えるもの
(6)受注者からの請求による工期の延長
(7)発注者の請求による工期の短縮

内容については各発注者から出されている設計変更ガイドラインを確認してください。
熟読しましょう。

重ねてになりますが、指定任意の違いについてはしっかりと把握しておく必要があります。

指定仮設として契約してあるものについて、設計図書と現地条件の不一致によって変更する必要が生じた場合はすべて設計変更対象となります。

条件明示をしっかりと

特に、任意仮設で発注する場合に大事なことです。

特記仕様書への記載や、契約図面へ特記条件を記載する際ですが、
「どちらとも取れるような曖昧な表現方法での記載」は極力避けましょう。

以下に具体例を書きます。

悪い例
「●●については、〇〇を計上しているので受注後に監督員と協議すること。」

良い例
「●●については、【▲▲が△△の現場条件を想定しており、】〇〇を計上している。受注後に【現場条件について相違があった場合は】監督員と協議すること。」

上記のように記載することで、契約条件がはっきりした状態で発注することができます。

責任の所在について明確になりますし、設計変更する際の判断基準も明確になります。

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最後に

以上で、指定仮設と任意仮設の使い分け方法についての記事を終わります。

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ここまで記事を読んでくださってありがとうございました!

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