【鋼構造物】高炉メーカーと電気炉メーカー

その他

鋼構造物の積算を行う際の予備知識として、高炉メーカーと電気炉メーカーについてまとめました。

現在、高炉メーカーは世界的な鉄鋼需要の落ち込みと原材料高を受け、大変苦しい状況に追い込まれています。

業界の動向なども交えたまとめ記事としています。
今回は読み物の部分がメインで、積算での注意点などはほぼありません。

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鉄鋼業界の予備知識

鉄鋼製品の生産方法は高炉と電気炉を使う2つの方法に分けることができます。

鉄鉱石から高炉を使って鉄を生産する
『高炉メーカー』
鉄スクラップから電気炉を使って鉄をリサイクルする
『電気炉メーカー』

高炉メーカー

高炉メーカーは鉄鉱石を原料として粗鋼を生産し、国内外の産業活動全体を支えています。

高炉メーカーとは、高炉で鉄鉱石を原料として銑鉄を生産するところから、転炉工程、造塊(鋳造)工程や連続鋳造工程を経て最終製品の製造までを一つの敷地内で行う銑鋼一貫製鉄所を所有する大規模な鉄鋼メーカーのことである。製品力・資本力・社会的影響力・研究開発力なども電気炉メーカー特殊鋼メーカー鋳鍛鋼メーカーを凌駕している。日本では、日本鉄鋼連盟の要職も高炉メーカー出身者が占めるなど、日本の鉄鋼業界をリードしており、鉄鋼業界トップの地位に君臨している。

引用:高炉メーカー ー ウィキペディア(Wikipedia:フリー百科辞典)

高炉メーカーの特徴については、「巨額の赤字で高炉を休止、日本の鉄鋼メーカーに何が起きているのか 2020.04.02 ー 日経XTEC」を読んで頂ければよく分かります。
本記事に引用掲載したかったのですが、文章量が多くなるため著作権で認められている引用範囲を超えると判断しました。もし、リンク切れになりましたらお手数ですがお問い合わせページもしくは土木積算.comツイッターアカウントにDM頂けると助かります。

高炉メーカーの特徴

高炉メーカーの特徴を以下にまとめます。

(1)工場1つで5000億円から1兆円近い初期設備投資がかかる
(2)生産開始をすれば大量かつ安価に鉄を生産できる
(3)製鋼設備を活用することで高度に結晶構造や成分を調整可能
(4)薄板などの製造に適している
(5)操業を維持するために多くの関係会社や協力会社を必要とする
(6)一度高炉を停止すると、再稼働に多額の費用がかかる
(7)高炉メーカー3社で鉄鋼業界を寡占(日本製鉄、JFEグループ、神戸製鋼所)
(8)ひも付き販売と呼ばれる販売形態をとることが多い

このうち、積算に関連するのは(3)(4)(8)です。
鋼構造物の設計をする際には、鋼材のJIS規格に規定された数値で構造計算を行います。従って、施工する際も規格を満足する鋼材で施工されなければ性能が保証できません。
JIS規格では化学成分と機械的性質が規定されており、JIS規格に適合した製品を高品質に提供できるのが高炉メーカーです。

ひも付き販売については下記にて記事にしてあります。

補足:業界の動向

神戸製鋼グループのアルミ製部材品質データ改ざん問題

銅とアルミ製品に関しての品質データ改ざんですので高炉関係ではありませんが、参考掲載しておきます。

神戸製鋼所は8日、生産するアルミ製部材について強度など顧客が求める品質基準を満たしていなかったと発表した。取引契約に反して品質データを改ざんしていた。供給先は三菱重工業など航空機関連メーカーやトヨタ自動車など約200社に及ぶ。管理職も含め少なくとも数十人がかかわっており、不正が組織ぐるみだったことも明らかになった。

神戸製鋼がデータ改ざん部材 トヨタや三菱重など200社に 2017.10.8 ー 日本経済新聞

詳しい経緯については、神戸製鋼所から報告書が出ていますので、リンクを貼っておきます。

当社グループにおける不適切行為に関する報告書(2018年3月6日) ー 株式会社神戸製鋼所
(https://www.kobelco.co.jp/releases/files/20180306_report.pdf)

実際には、神戸製鋼のグループ会社が顧客に渡す品質証明データを偽装して納品していた事案です。神戸製鋼所が詳しい内部調査の元、自主発表しました。当時、一大ニュースとして大々的に報道されたのは記憶に新しいです。
鉄鋼製品ではありませんでしたが、この不祥事以降に各業界内での検査体勢について需要家からより厳しい目線が向けられるようになったのは間違いありません。

新日鐵住金の商号変更

2019年4月1日、新日鐵住金から日本製鉄に商号変更がありました。

日鉄日新製鋼の合併解散

2020年4月1日、日鉄日新製鋼は日本製鉄に合併され解散しました。

電気炉メーカー

電気炉メーカーは鉄スクラップを電気炉で溶かし、リサイクルして粗鋼を生産します。

電気炉メーカー(でんきろメーカー)とは、鉄スクラップを原料として電気炉鉄鋼を生産する鉄鋼メーカーのことである。一般に棒鋼(鉄筋)、形鋼平鋼鋼板を主力製品とする普通鋼を生産するメーカーを電気炉メーカーとし、特殊鋼を生産する鉄鋼メーカーを特殊鋼メーカー、鋳鍛鋼品を生産するメーカーを鋳鍛鋼メーカーとして区別している。「電気炉」は「電炉」とも略されるので、電気炉メーカーを電炉メーカーと言う事もある。

引用:電気炉メーカー ー ウィキペディア(Wikipedia:フリー百科辞典)

電気炉メーカーの特徴

電気炉メーカーの特徴を以下にまとめます。

(1)小規模の生産設備で生産可能(高炉に比べて1/10程度の初期設備投資)
(2)鉄スクラップを原料とする = 不純物を取り除くのに費用がかかる
(3)主な製造製品は、棒鋼、形鋼、一部の厚板など
(4)特殊鋼など要求性能の異なる幅広い品目を作ることが得意
(5)高炉と比較すると、省エネルギーで生産可能=環境に優しい
(6)メーカーに大小があり、国内には約60社前後あると言われている
(7)店売り販売と呼ばれる販売形態で販売される

高炉メーカーと電気炉メーカーでシェアを奪い合う業界構造になっています。
なお、電気炉メーカーの業績は原料のスクラップ時価に大きく影響されます。
鉄スクラップは90年代までは輸入に頼る部分がありましたが、現在は自給できるようになり、反対にアジア諸外国に輸出している状況です。
品質保証が大事な製品とスケールメリットが有利な製品を中心に、高炉メーカーが電気炉メーカーの台頭を押さえつけているような状況になっています。

【 国内シェアの簡単なイメージ 】
鋼構造物主部材
高炉メーカー 10割
形鋼
電気炉メーカー 7割
H型鋼
高炉メーカー 5割
電気炉メーカー 5割
異形棒鋼
電気炉メーカー 10割
厚板
高炉メーカー VS 東京製鐵
その他特殊鋼
電気炉メーカー 10割

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鋼材についての補足情報

電気炉材について

除去できない不純物

原料の鉄スクラップには、鉄以外にもさまざまな不純物が混じっており、電気炉で製鋼する際はこれら不純物を取り除きながら製造されます。

一方、製鋼過程で除去できない不純物があり、Cu(銅)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)などでこれらはトランプエレメントと呼ばれます。これらの含有量が必要以上に多い場合は問題になります。

トランプエレメントを多く含む鉄スクラップが必要以上に混入しないよう、鉄スクラップ回収業者や電炉メーカーでは分別やブレンドがされています。

高炉と電気炉の製鋼法の違い

相違点は、主原料と製銑工程の有無です。鋼材の最終化学成分は精錬工程にて調整されます。また、鋼材の内部品質は鋳造工程にて作りこまれます。この精錬と鋳造に使用する設備は、鋼材品種と要求性能により決まります。
そのため品質バラツキは各製鉄会社の工程能力によるもので、電気炉製鋼法や高炉製鋼法の差異ではありません。

引用:3.2 製鋼工程 東京製鐵の鋼材 Qand A ー 東京製鐵株式会社
引用:3.2 製鋼工程 東京製鐵の鋼材 Qand A ー 東京製鐵株式会社
引用:3.2 製鋼工程 東京製鐵の鋼材 Qand A ー 東京製鐵株式会社

より詳しい情報については、東京製鐵のPDFを直接見てください。
東京製鐵の鋼材 Qand A
http://www.tokyosteel.co.jp/pdf/qa.pdf

ミルシートとは

鋼材を生産した際の履歴書=ミルシートです。

ミルシート(英: Mill Test Report, Mill Test Certificate)は、鋼材の材質を証明する添付書類のこと。鉄鋼メーカーが鋼材製品を納入時に発注者へ発行する証明書のことをミルシートと呼ぶのが日本では一般的である。内容は鋼材の機械的性質や化学成分などで、注文により生産したロットごとに規格値と製造実績値が記載される。

工場や製作所(mill)が発行する書(sheet)という意味からミルシートと呼ばれ、主に日本で呼ばれる和製英語である。

引用:ミルシート ー ウィキペディア(Wikipedia:フリー百科辞典)

新設鋼構造物の施工管理に携わると分かりますが、購入した鋼材のロットごとにミルシートが発行され、高炉(もしくは電炉)から製造した際の製造実績値を確認することができます。ミルシートには抜き取り検査した際の化学成分など記載されており、品質管理責任者のサインがされています。

ミルシートについては、詳しい記事を書かれているサイトがありますのでリンクを貼っておきます。

ミルシートについて解説!内容や材料証明書との違いについてもご紹介 ー Mitsuri

余談ですが、この品質管理責任者のサインがとてもカッコいいので、施工管理される際はぜひ確認してください。

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鉄鋼業界は「自動車業界に似ている」と考えると分かりやすい

生産される製品は、”粗鋼”と”自動車”で全く異なりますが、装置産業であるがゆえに業界構造と周辺環境がかなり類似している状況となっています。

業界構造

装置産業とそれを取り巻く関連企業

高炉メーカーは、高炉を中心とした製鉄工場だけで製造設備が完結するわけではなく、関係会社や協力会社のほか、製造設備を操業するための地域の周辺産業に支えられながら事業が成り立っています。

この図式は、同じ装置産業である自動車業界と同じであり以下の点で類似しています。

・製品製造にあたり関係会社が多岐に渡る
(製造ラインが滞ると関係者全員の仕事が止まる)

大手3社(日本製鉄、JFEグループ、神戸製鋼所)で粗鋼生産量の7割強を占めるなど、寡占状態であることも似ています。
ちなみに、現在高炉メーカーは世界的な鉄鋼需要の落ち込みと原材料高を受け、大変苦しい状況に追い込まれています。
一方、電気炉メーカーは鉄鋼需要の落ち込み以上にスクラップ市況が下落しているため、そこまで業績は悪くなっていません。そのため、現時点では高炉メーカー不利が顕著な状況です。

関連記事がありますので、掲載しておきます。
東京製鉄、電炉の雄が自動車用鋼板にかける執念 2020.06.21 ー 東洋経済 ONLINE

新車と中古車

新設鋼構造物と鉄筋

鋼橋などの鋼構造部材は、高炉メーカーが原料の鉄鉱石から品質管理しながら原板を製造し、鉄工会社が加工・組立を行います。

一方、多くの電気炉メーカーが製造する異形棒鋼は鉄スクラップを原料として製造されます。

この関係性は、自動車販売の『新車』『中古車』に似ているかもしれません。自動車は”リユース”、鋼材は”リサイクル”なので根本的には異なりますが、一度世の中に出た製品を二次利用して社会に還元する役目を担う点では同じです。

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最後に

以上で、高炉メーカーと電気炉メーカーのまとめ記事を終わります。

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