仮設材賃料を計上する際の標準長についてまとめました。
標準長は鋼矢板やH形鋼といった重仮設材を積算で取り扱う際に、理解しておかなければならない項目の一つです。
特に必要とされるのは以下のような検討をする場合です。
鋼矢板やH形鋼の継施工費の適切な積算方法が分からない・・・。
16mのⅢ型鋼矢板を施工するのだけれども、継施工費の計上は妥当なのだろうか。
このような疑問に対しては「標準長」と「搬入条件」を勘案して判断します。
この記事で詳しく解説しますので参考にしてください。
この記事では以下のことについて書いています。
・標準長とは
・標準長についての情報
1)「建設物価」と「積算資料」より
2)仮設構造物施工指針(平成11年3月)より
3)各発注主体が設計要領を出している場合の例
・継施工の有無の判断方法
標準長とは
標準長とは、仮設材をリースしている会社が通常保有している仮設材の長さです。
一般に、リース会社が保有している仮設材の長さはある一定の長さで揃えられている訳ではなく、現場や市場のニーズに合わせた対応ができるよう、保有する長さにバラ付きを持たせたラインナップとしています。
このバラ付きをリース会社などへの聞き取りによって調査し、集計結果から一般化したものが標準長です。
このバラ付きの範囲は仮設材の規格毎で異なり、傾向としては断面二次モーメントの大きい仮設材ほど標準長が長い特徴があります。
積算する際の標準長の判断基準とする選択肢は複数あり、
・物価本(建設物価/積算資料)に記載されている標準長
・道路土工 仮設構造物工指針(平成11年3月)ー (社)日本道路協会の巻末に記載されている参考資料
・各発注主体が発行している設計要領、手引き、積算参考資料 など
が挙げられます。
(上記については、この記事の後半部分で参考資料をまとめておきます。)
標準長については、指針や設計基準などによって決まっている訳ではなく(一社)重仮設業協会が市場調査を行った結果を元にし、一般的と判断する長さについて定義したものです。
記事作成のため各文献にあたりましたが、標準長について明確に定義している文章はありませんでした。よって、ここに掲載の文章は当サイトのオリジナルです。
より正しい文章がありましたらご指摘ください。修正対応致します。
標準長と並んでよく使う言葉に、スクラップ長があります。スクラップ長については以下の記事で詳しくまとめています。
標準長についての情報提供
「建設物価」と「積算資料」
(一財)建設物価調査会が発行している「建設物価」及び(一財)経済調査会が発行している「積算資料」から、標準長について記載されている部分についてまとめます。
「建設物価」
●鋼矢板
Ⅱ型・・・4〜8m
Ⅲ型・・・6〜15m
Ⅳ型・・・13〜20m
ⅤL型・・・15〜20m
●軽量鋼矢板
2型・・・2.5〜5m
3型・・・2.5〜5m
●H形鋼(広幅系列)
H-200×200・・・4〜8m
H-250×250・・・6〜12m
H-300×300・・・8〜16m
H-350×350・・・10〜18m
H-400×400・・・10〜18m
●H形鋼(中幅系列)
H-594×302・・・8〜12m
●山留材
H-250・・・3〜6m
H-300・・・3〜6m
H-350・・・3〜6m
H-400・・・3〜6m
「積算資料」
●鋼矢板
Ⅱ型・・・4〜8m
Ⅲ型・・・6〜15m
Ⅳ型・・・13〜20m
ⅤL型・・・15〜20m
●軽量鋼矢板
2型・・・2.5〜5m
3型・・・2.5〜5m
●H形鋼(広幅系列)
H-200×200・・・4〜8m
H-250×250・・・6〜12m
H-300×300・・・8〜16m
H-350×350・・・10〜18m
H-400×400・・・10〜18m
●H形鋼(中幅系列)
H-594×302・・・8〜12m
●山留材
H-250・・・3〜6m
H-300・・・3〜6m
H-350・・・3〜6m
H-400・・・3〜6m
「建設物価」も「積算資料」も標準長に関する記載は全く同じでした。両誌を毎度両方調べる必要はありませんので安心してください。
「建設物価」も「積算資料」も”標準長は、地域により多少異なる場合がある”と注意書きされていることを補足しておきます。
また、Ⅱ型鋼矢板やⅤL型鋼矢板は全国に在庫状況があるわけではなく、地域性がある仮設材ですので積算する際は注意してください。詳しくは、「建設物価」「積算資料」の両物価本を見てください。
仮設構造物工指針(平成11年3月)
仮設構造物工指針(平成11年3月)ー (社)日本道路協会では巻末の参考資料で「標準保有長さ」と「最小長さ」の一覧表が記載されております。
この「標準保有長さ」を”標準長”の判断根拠として積算を行う場合もあります。
各発注主体が設計要領などを出している場合
各発注主体の設計要領などで標準長について定義している場合、前述した2つの方法に依らずにこちらを優先して積算根拠とする必要があります。具体例として、国土交通省中部地方整備局の道路設計要領(設計編)第13章 仮設計画から当該箇所を転載します。
(https://www.cbr.mlit.go.jp/road/sekkeiyouryou/index.htm)
上記の例では若干ですが物価本もしくは指針と相違している部分が見受けられます。具体的には青線で示した箇所です。
この例は中部地方整備局の場合でしたが、ご自分の所属機関で上記のような文書が存在する場合はそちらを優先する必要がありますので注意してください。
継施工の有無の判断方法
さて、ここからがこの記事の本題部分です。
「標準長」がどのような場合に用いられるかというと、鋼矢板やH形鋼を施工する時の継施工の有無の判断材料として利用することが多いと思います。
冒頭でも書きましたが、一般的に継施工の有無は以下の2つを勘案して決めます。
・標準長
・搬入条件
標準長以上の仮設材を施工する場合は「継施工有り」
再度書きますが標準長とは、仮設材をリースしている会社が通常保有している仮設材の長さです。
例えば、記事冒頭のこのパターン
鋼矢板やH形鋼の継施工費の適切な積算方法が分からない・・・。
16mのⅢ型鋼矢板を施工するのだけれども、継施工費の計上は妥当なのだろうか。
前段で説明してきましたが、鋼矢板Ⅲ型の標準長は「6〜15m」です。
従って、16mのⅢ型鋼矢板を施工する場合は標準長を超えた長さですので、継施工費を計上するのが適当です。併せて、施工歩掛も対応したもので積算する必要が出てきます。
搬入条件によっては「継施工有り」
もう一つの搬入条件とは言葉そのままで、仮設材が搬入可能な現場条件かどうかということです。
仮設材が長くなる場合は、トレーラに積載した際の回転半径が大きくなり現場に搬入できる仮設材の長さに制限を受ける場合があります。このような場合は、標準長以内であっても継施工費を計上するのが適当と思われます。
例えばⅣ型鋼矢板の標準長が20mまであるからといって、必ずしも20mまで継施工無しとするのが適当とは限りません。
継施工費用を計上するのが適当な場合もありますので、搬入条件を勘案した積算をしてください。
継施工有りとした場合に標準長の仮設材では余る場合はどうするのか
ちょっと珍しい例について書きたいと思います。
正解かは分かりませんが、考え方についての一例です。
例えばⅣ型鋼矢板を22m施工する場合は、標準長が「13〜20m」ですので最小長さ同士での組み合わせで継施工をすると13+13=26mで仮設材が余ります。
このような場合は、以下のように考えましょう。
(1)16mの鋼矢板を8mと8mに切断する。
(2)14mと8mの鋼矢板を継施工して22m
上記で考えた場合の要点をまとめます。
『メリット』
・鋼矢板の仮設材賃料は「L=16m」と「L=14m」を計上であるため標準長内に収まる
・返却時もスクラップ長以上のため、賃料による計上で一貫できる
・切断による短尺補償については修理費及び損耗費に含むと考える
『デメリット』
・Ⅱ-2-(16)-1 ガス切断工の別途計上が必要
・仮設材運搬費がL=16mの方のみ「基本運賃15m超」となるため積算が煩雑となり若干割高
上記の考え方と、13+13=26m施工した場合とで経済比較し、安価である方を選択すると良いと思います。
例えば、L=25mなど標準長の最小長さを継施工した長さに近づいてくると、13+13=26mとした方が経済的になってくるかと思います。
ただし、標準長より短い仮設材を管内のリース会社が通常保有しており、上記の考えによらずに積算できる可能性もあります。実情を確認した上で判断するのがより良いかと思います。
最後に
以上で、標準長についてのまとめの記事を終わります。
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