工事現場の除雪費用【積算予備知識】

仮設工
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工事現場の除雪費用を積算する際の予備知識をまとめました。

工事中の除雪費用は、土木工事標準積算基準書に掲載がなく各発注機関で独自の積算基準を用意して対応している、もしくは積算基準が無い場合は見積りによる計上になるかと思います。

計上する項目としては仮設工ですので注意してください。

一方で、道路除雪工という一見すると類似した工種がありますが、こちらは作業環境が大きく違うため、積算基準を使い回して用いることは通常はしませんので注意してください。

本記事では、工事中の除雪費用を計上する際の予備知識として活用頂けるよう、積算する際に知っておくべきポイントについてまとめました。

この記事では以下のことについて書いています。

・工事に関する除雪費用の積算基準についての情報提供
・工事中の除雪費用を計上する際によく話題に上がること

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工事中の除雪費用の積算基準

工事中の除雪費用に関する積算基準は、土木工事標準積算基準書には記載がありません。

これは、除雪作業の費用に地域差が大きく、現場実態も様々であるため標準化することが困難であることが理由と考えられます。

これに対し、工事中の除雪費用について独自の積算基準を用意して対応している場合があります。
その一方で、全く用意していない発注機関も多く、除雪費用の取り扱いについては地域によって大きな違いがあります。

後述しますが、これは積雪自体に以下の特徴があることに起因しています。
下記の特徴により、一般に工事中の除雪費用の積算難易度は高いです。
(ここでいう積算難易度とは、”正しい積算”なのかという問いに対して妥当性を判断するまでの手間の多さと思ってください)

(1)積雪は単位体積質量が千差万別であり標準的な作業量を想定することが困難
(2)積雪量が少ない場合は気温上昇と共に溶けて消える

(1)について補足です。
雪はもともと水ですので、単位体積質量が1,000kg/m3を上回ることはありません。一方で、乾いた雪なのか、湿った雪なのか、加えて時間の経過と共に自らの融雪や降雨によっても比重が大きく変わるため、除雪するタイミングによって単位体積重量が大きく変わります。
雪の重量が変われば体積当りの工数も変わります。
これが、標準歩掛の作成を難しくしている理由の一つです。

各発注機関で積算基準がある場合

一例として、青森県ではホームページ上で独自制定の積算基準を公表されていましたので参考としてリンクを貼っておきます。

工事実施に当たって発生する除雪費用の積算方法について詳しく記載されています。

以下、工事中の除雪費用の積算基準を定義している部分を引用します。

工事が除雪対象期間に該当する場合には実情に応じ除雪費用を積算すること。
(中略)
工事箇所が測候所の条件と著しく異なると認められるときは他の観測記録又はその他の実績により補正して適用すること。

令和6年度 土木工事標準積算基準書(共通編)令和6年10月1日以降適用 ー青森県 県土整備部

として、当初設計から平均的に必要と思われる工事中の除雪費用を計上しつつ、積雪量に応じて契約内容の変更ができる余地を残した積算基準としています。(ただし、付表に「工事用除雪は、実績による変更を行わないことを基本とする」と注意書きがあることを補足しておきます。)

具体的には、除雪対象期間と除雪回数、最大積雪深を測候所の測定値を元にした積算用の参考表が用意されており、当初発注時に現場内除雪費用の根拠とできます。

土木設計積算関係図書(県土整備部):青森県ホームページ(https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kendo/seibikikaku/hyouzyun-sekisan.html

以下、同ホームページに掲載されているPDF版です。

令和6年度 土木工事標準積算基準書(共通編)令和6年10月1日以降適用 ー青森県 県土整備部(https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kendo/seibikikaku/files/R061001_kyoutuu.pdf

【共通編】第5章 仮設工 (22)現場除雪工という形で、国版(国土交通省版)に追記する形で積算基準が掲載されています。

これは青森県の積算基準です。発注機関において独自の積算基準が運用されている場合が多いと思いますので、あくまで参考情報に留めてください。

見積りとする場合

各発注機関で現場内の除雪費用の取り扱いを制定した積算基準がなければ、見積りによって積算することになるかと思います。

この際、出てくる見積りは何も指定をしなければ作業員○人、ダンプ○台、バックホウ○日のように常用の形で出てくることが多いのではないでしょうか。

工事受注者が単独、もしくは下請業者と現場作業を進める場合には、この見積り内容で問題なく折り合いがつくと思います。

一方で、税金を使った公共工事内容を他者に説明する場合には、国総研の設計表示に合わせて「現場内除雪(人力)〇〇人日」「現場内除雪(機械)○○時間」の体裁としておいた方が後々都合が良い場合が多いかもしれません。
(参考:第1章 基本事項 1.6 設計表示単位及び数位 ー 令和6年度 土木工事数量算出要領 ー 国土技術政策総合研究所(https://www.nilim.go.jp/lab/pbg/theme/theme2/sr/yoryo0604.htm))

可能であれば代価表のように内訳を持たせた積算根拠を用意しておいた方が無難かと思います。

積算根拠の再確認

積算基準の記載内容の大元となる国からの通知では、下記のように取り扱いを定めるとされています。

原則として3社以上から徴収し、歩掛の決定方法は、平均的又は最頻度の歩掛を採用する。ただし、変更積算時は施工者より見積りを徴収し、妥当性を確認した上で採用する。

第2章 工事費の積算(1)直接工事費 2.歩掛 ー「土木工事工事費積算要領及び基準の運用」の改定について ー 国官技第274号令和3年2月18日 国土交通省(https://www.mlit.go.jp/tec/content/001391824.pdf

見積りで工事中の除雪費を計上するような状況は、十中八九、設計変更で精算する際だと思います。見積りで計上する場合は、上記の記載を根拠に、工事受注者からの見積りを根拠として積算すれば良さそうです。

計上する際は「仮設工」として計上することが一般的かと思います。

積算基準 第5章 数値基準等 (2)数量総括表への条件明示の別表で仮設工 除雪工 現場内除雪 の記載がありますので、契約数量の取り扱いは「仮設工」として問題ありません。
また、全ての積算基準の積算体系ツリーの元になっている、国土技術政策総合研究所の工事工種体系ツリーも「仮設工」とされています。
http://www.nilim.go.jp/lab/pbg/theme/theme2/sekisan/tree/tree.htm

よって、安心して仮設工として計上していただいて良いと思います。直接工事費への計上でOKです。

もしも、工事着手時に除雪して現場入りする際は準備費積み上げが適切かと思いますが、そのような場面はあまり無いかと思います。

積算で見るべきなのは「体積」なのか「面積」なのか

積算で計上する場合の単位について一般例を示します。

・人力除雪の場合「体積m3
・機械除雪の場合「面積m2

機械除雪をする場合の標準とする施工機械はバックホウ除雪、ホイールローダ除雪、ブルドーザ除雪など、種々のパターンがあります。

これについては発注機関によって考え方が異なる部分ですので、お手持ちの積算基準をご覧ください。

なお、現場内に除雪した雪を積み上げておくスペースが無い場合はダンプトラックによる排雪が必要になる場合があります。これについては見積りによって対応することが一般的かと思います。

工事中における除雪工は、道路除雪工と作業環境が全く異なります。

積算基準を使いまわして対応することは適切ではありませんので、注意してください。

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除雪費用を計上する際によく話題に上がること

冒頭に書きましたが、一般に工事中の除雪費用の積算難易度は高いです。
(ここでいう積算難易度とは、”適切な積算”なのかという問いに対して妥当性を判断するまでの手間の多さと思ってください)
雪が持つ特徴について再度掲載します。

(1)積雪は単位体積質量が千差万別であり、標準的な作業量を想定することが困難
(2)積雪量が少ない場合は気温上昇と共に溶けて消える

ここからは、除雪費の積算をする際によく話題に上がる事例について紹介します。

主に「(2)積雪量が少ない場合は気温上昇と共に溶けて消える」に関することについてです。

本当に除雪は必要だったのか

特に、根雪になるほどの降雪がない地域の工事積算をする場合に話題に上がる内容ですが、「本当に現場内除雪が必要だったのか?」ということが挙げられます。

地域によっては、”雪は一時的な障害であり時間と共に消えるもの”という認識が一般的な地域では、現場内除雪に対して税金を充当する理由について説明するハードルが上がります。

いくら降雪した実態写真が残っていても、後から

除雪してまで施工を進める必要なかったんじゃない?

と判断されればそれまでです。

工事実施に当たり、除雪が不可欠であった理由をしっかりと整理しておいた方が良いです。

具体的な理由としては以下が挙げられるかと思います。

・指定された工期内で工事完了するために除雪が不可欠だった
・工事目的物の品質管理上不可欠だった

もしも、工期的な無理を少しでも強いている工事発注であるならば、除雪費の請求に対して満額で対応するのが道義かと思います。

除雪作業前の「積雪深」と現場の全体写真が明確に分かるような根拠資料を残しておくことが良いと思います。

特に「白」は人の距離感を狂わせる色です。判別が容易になるよう工夫することが望ましいです。

工事中止を指示する場合

積雪を理由に工事中止する場合もあるかと思います。国土交通省の工事中止ガイドラインを掲載しますので、参考にしてください。

◆受注者の責に帰すことができない事由により工事を施工できないと認められる場合は、
「(1)工事用地等の確保ができない等のため受注者が工事を施工できないと認められるとき」と「(2)暴風、豪雨、洪水、高潮、地震、地すべり、落盤、火災、騒乱、暴動その他の自然的又は人為的な事象であって受注者の責に帰すことができないものにより工事目的物等に損害を生じ若しくは工事現場の状態が変動したため受注者が工事を施工できないと認められるとき」の2つが規定されている。【関係法令:契約書第20条】

◆上記2つの規定以外にも、発注者が必要と認めるときは、工事の全部又は一部の施工を一時中止することができる。
※一時中止を指示する場合は、「施工できないと認められる状態」にまで達していることが必要であり、「施工できないと認められる状態」は客観的に認められる場合を意味する。

4.工事を中止すべき場合 ー 工事一時中止に係るガイドライン(案)平成28年3月 ー 国土交通省

上記、太字と赤線で強調しましたが、積雪を理由に工事中止を指示する場合は積雪により「工事目的物等に損害を生じ工事現場の状態若しくは工事現場が変動したため受注者が工事を施工できない状態」であることを理由にすると良いかと思います。

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最後に

以上で、工事現場の除雪費用についての予備知識の記事を終わります。

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それでは!

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