法面整形工の積算方法についてまとめました。
法面整形工は特に盛土工事で計上する機会が多い工種です。
目にする機会の多い基本的な工種の一つかと思います。
この記事では道路土工指針をガイドに積算基準と対比できる記事内容としました。
それぞれの作業条件の違いについて理解した上で適切な積算をするようにしましょう。
法面整形とは
法面整形とは、盛土法面整形工においては法面表層部を締固め整形すること。切土法面整形工においては、法面表層部を削取りながら整形することです。
盛土部
築立(土羽)整形
盛土部において、築立(土羽)部が本体と同一材料土でない場合は、積算基準では「築立(土羽)整形」を計上します。

築立(土羽)部が本体と同一ではない場合とは、道路土工 ー 盛土工指針(社)日本道路協会 の以下の記述を読むと分かります。
2)粗粒度(砂質土等)の場合
5-6(2)注意を要する盛土のり面 道路土工ー盛土工指針(平成22年度版)(社)日本道路協会
礫(G)、砂質土(S)等の粗粒度により構築される盛土で侵食が問題となる場合、雨水浸透によるスレーキングのおそれのある場合、あるいは緑化が必要な場合には、のり面を土羽土で被覆することが多い。ただし、土羽土によって盛土内の浸透水の排水がしゃ断されない構造(解図4-8-1参照)とすることが重要である。

このような時は、一般に急勾配でかつ土羽土の厚さが30cm程度の場合が多いので、施工は解図5-6-4に示した人力施工によることになるが、できるだけ人力施工で仕上げた後、小型振動ローラ等を用いて再度締固めすることが望ましい。
5-6(2)注意を要する盛土のり面 道路土工ー盛土工指針(平成22年度版)(社)日本道路協会


厚さ30cmとは芝(地被植物)が生育するのに必要な最小厚さです。
築立(土羽)部が本体と同一材料土でない場合の条件について以下に整理します。
・粗粒度により構築される盛土のうち、侵食が問題となる場合
・雨水浸透によるスレーキングのおそれのある場合
・緑化が必要な場合
上記3点のうち、どれかに当てはまる場合は土羽土を別材料で計画します。
土羽土が別材料となる場合は、盛土本体と別で施工されるため築立(土羽)整形で計上します。
法面締固めの有無
土羽土が別材料の場合は、「法面締固めの有無」は”有り”とします。

”無し”とした場合は、「機械による削取り整形」とします。
現場制約の有無
積算基準の注意書きを参照すると、下記の条件のいずれかに当てはまる場合は現場制約有りとするとされています。
・機械施工が困難な場合
・一度法面整形を完成した後、局部的に侵食・崩壊を生じた場合
・法面保護工を施工する前に必要に応じて行う整形作業(二次整形)をする場合
ここで、「機械施工が困難な場合」について注目してください。
道路土工ー盛土工指針では、以下の記述があります。
可能であれば、のり面勾配を1:1.8程度の緩勾配とし、土羽土の厚さは機械施工可能な幅2〜3mに設計するのが望ましい(解図5-6-5参照)。
5-6(2)注意を要する盛土のり面 道路土工ー盛土工指針(平成22年度版)(社)日本道路協会

上記記述を整理すると、以下になります。
・土羽土の幅2〜3m → 「現場制約無し」
・土羽土の幅30cm → 「現場制約有り」

各地方整備局が発行する数量算出要領の元になっている資料である、国土技術政策総合研究所「土木工事数量算出要領(案)」では土羽土の厚さを30cmとしています。ほとんどの設計がこれに従うはずですので、指針を読む限りでは積算においては「現場制約有り」とする方が筋が通りそうな気がします。
ただし、土羽土の幅2〜3mはローラー転圧を考えた施工幅だと思われます。
以下のバックホウによる法面締固め作業を想定する場合は機械施工可能と判断してよいと思います。
解図5-6-1(c)は、バックホウで盛土のり肩からのり面の盛土材料を補給しながら、バケットの底面でのり面整形を行う方法である。のり面表面に礫や玉石を使用するときには、バケットの底面で、表面に浮いている礫などを押し込むのにもこの方法が使われる。さらに、バックホウにはのり面仕上げ用のアタッチメントバケットがあり、このバケットを30〜50cmの高さからのり面に落とし、底面でのり面を締め固めていく方法も用いられている。
5-6(1)のり面の締固め・整形 道路土工ー盛土工指針(平成22年度版)(社)日本道路協会


土羽土の厚さについては記述がありませんが、この施工方法が可能と判断するのであれば機械施工可能と判断してよいと思われます。ただし、先の指針の件もあり、厚さ30cmの土羽土に対してこの施工方法を想定して計上するのが適切なのかどうかは判断が分かれるかもしれません。
機械による削取り整形
盛土部において、築立(土羽)部が本体と同一材料土である場合は、積算基準より「削取り整形」を計上します。
「削取り整形」は施工フローより法面締固め”無し”、現場制約”無し”とした場合の作業です。
削取り整形は、次の作業を想定している単価です。
盛土幅より広く余盛りし、締固め不十分な盛土端部をバックホウなどで削り取り整形する施工法もある。この工法は盛土用地幅に余裕のある場合に有効である。(解図5-6-2)
5-6(1)のり面の締固め・整形 道路土工ー盛土工指針(平成22年度版)(社)日本道路協会


サーチャージ盛土を完成断面に仕上げる時の法面整形を想像すると分かりやすいと思います。
(サーチャージ盛土がよく分からない場合は、過去の記事をご覧ください)
切土部
機械による切土整形
切土整形は、地山の土質が岩盤と土砂で作業が少し異なります。
ここでは、土砂のり面の施工について記載します。
地山が土砂の場合ののり面の施工に当たっては、解図6-14に示すような丁張にしたがって仕上げ面から余裕をもたせて本体を掘削し、その後人力やバックホウなどで仕上げる方法がよく用いられる(写真6-1)。
6-4-4 土砂のり面の施工 道路土工ー盛土工指針(平成22年度版)(社)日本道路協会
なお、植生工を施工する場合、法面の仕上げは多少の凹凸があった方がよいこともある。


積算する時の注意点
切土整形の判断基準
切土整形は切土法面の表層部を削取りながらの法面整形です。
よって、切土工事において計上します。
サーチャージ盛土断面を切土して完成断面に仕上げる場合など、『盛土工事の一連の作業の中で行う法面整形作業』は図面上は切土法面整形に見えますが、盛土法面整形に該当しますので注意してください。

切土法面整形は盛土法面整形と比較すると施工単価が高いです。切土法面整形は”地山”を切土整形する場合のみが計上対象になります。
築立(土羽)整形の注意点
築立(土羽)整形を計上する場合は、土羽土量を盛土量から控除しなければなりません。
土羽土量 (m3)= 土羽面積(m2) × 土羽厚さ(cm)/100
積算で計上する盛土量(m3) = 全体盛土量(m3) ー 土羽土量(m3)
控除せずに積算すると、土羽土の土量分が二重計上状態になりますので注意してください。

設計委託成果受け取り後に土羽土有りと方針転換する場合、図面・数量の修正作業が生じます。
最後に
以上で、法面整形工の積算方法の記事を終わります。
なお、法面の施工方法について指針で定められていることについて、『【施工指針】のり面の施工方法について定められていること』という記事でまとめました。
こちらも合わせて読んでいただければ、より理解が深まるかと思います。
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