床版防水層の積算方法【橋面防水工】

舗装工

床版防水層の積算方法についてまとめました。

2012年の中央自動車道笹子トンネルの天井板落下事故に端を発した道路ストック総点検以降、近年では点検により劣化が顕在化した道路施設、中でも橋梁補修工事が多く発注されるようになりました。

床版防水層の設置が道路橋示方書に明記された平成14年以前の橋梁では、防水層が無いもしくは端部付近のみといった設計がされている橋梁が多く、橋梁補修工事の大半で舗装版の打ち換えと共に床版防水層の新設が行われています。

記事の内容としては、橋梁補修工事の発注経験の少ない市区町村の方向けの内容を意識した記事内容としました。工事発注の際に参考にして頂けると幸いです。

この記事では以下のことについて書いています。

・床版防水層とは
・床版防水層の積算方法
・床版防水層を積算する時の注意点
・材料についての補足情報

床版防水層の積算は、シート系や塗膜系といった一般的な防水層であれば市場単価を使って積算しますので難易度はあまり高くありません。

ですが、設計数量の考え方に注意が必要だったり、導水管や目地材の材料を調べるのに手間がかかります。この記事では、そのような部分についても補足情報をまとめました。

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床版防水層とは

床版防水層とは、道路橋床版防水便覧(平成19年3月)では以下のように定義されています。

床版の防水を目的として設ける層。一般的には床版との接着剤、床版防水材、舗装との接着剤から構成される。

1.3 用語の定義 ー 道路橋床版防水便覧(平成19年3月)(公社)日本道路協会
図-2.1.2 床版防水の構成 ー 道路橋床版防水便覧(平成19年3月)(公社)日本道路協会

舗装面から浸入する水は、床版の塩害、疲労、ASRを引き起こす劣化要因であり、道路橋床版の耐久性向上のためには床版への水の影響を防ぐことが重要です。

床版防水層はこれら水の影響に対して有効な対策であることが分かっており、平成14年の道路橋示方書の改定より「アスファルト舗装とする場合は、橋面より浸入した雨水等が床版内部に浸透しないように防水層等を設けるものとする」と明記されました。

そのため、現在の新設橋梁では床版防水層の設置が原則とされています。

一方、既に床版やコンクリート桁に劣化及び変状が発生している橋梁では、これまで防水層が無かったことによる舗装面からの水の供給により劣化が促進している事例も多く、防水層が無い(と思われる)橋梁の補修工事を行う場合、舗装版を撤去して新たに防水層を設置する対策工が一般的に行われています。

床版防水層の使用材料としては、材料そのものに防水機能がある瀝青系の材料が使われることが多いです。

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床版防水層の積算方法

市場単価

「シート系」や「塗膜系」といった、道路橋床版防水便覧に記載されている一般的な床版防水層の施工については、市場単価を計上することにより積算します。
市場単価では”橋面防水工”という名称で物価本に掲載されており、積算基準では第Ⅵ編 土木工事標準単価及び市場単価 第2章市場単価 (12)橋面防水工として記載されています。

市場単価の単価根拠は(一財)建設物価調査会の季刊『土木コスト情報』及び(一財)経済調査会の季刊『土木施工単価』に掲載されています。

シート系

シート系の床版防水層は以下の3種類に分けられます。

(1)流し貼り型
(2)加熱溶着型
(3)常温粘着型

「流し貼り型」
加熱溶融した貼付用アスファルトを流し込んで防水シートを溶着させる方式です。人力施工で完了するのが特徴です。

6.3.2 シート系床版防水層 ー 道路橋床版防水便覧(平成19年3月)(公社)日本道路協会

「加熱溶着型」
加熱溶融する接着剤が塗られた防水シートをヒーターやバーナーで加熱溶着する方式です

6.3.2 シート系床版防水層 ー 道路橋床版防水便覧(平成19年3月)(公社)日本道路協会

「常温粘着型」
常温で接着性を有する粘着剤が塗られた防水シートを貼り、後に舗設するアスファルト混合物の熱と重機の転圧によって一体化させる方式です。ブリスタリングの発生が比較的少ないことから、歩道部にも適用されます。

6.3.2 シート系床版防水層 ー 道路橋床版防水便覧(平成19年3月)(公社)日本道路協会

シート系防水層では、全ての方式で市場単価が適用可能です。シート系防水層であれば機械施工・人力施工、関係ありません。

このうち、特にコンクリート床版新設時に現場でよく目にするのは流し貼り型常温粘着型です。一般に、図面に防水層(シート系)と書かれている場合はこのどちらかの防水層を想定していると考えて良いと思います。

塗膜系

塗膜系の床版防水層は以下の3種類に分けられます。

(1)アスファルト加熱型
(2)ゴム溶剤型
(3)反応樹脂型

「アスファルト加熱型」
アスファルトに合成ゴムなどを加えた防水材を加熱し、機械散布もしくはハケなどで塗布する方式です。

6.3.3 塗膜系床版防水層 ー 道路橋床版防水便覧(平成19年3月)(公社)日本道路協会

「ゴム溶剤型」
クロロプレンゴムなどの合成ゴムを揮発性溶剤に溶かした防水材を、ハケなどで数回に分けて重ね塗りする方式です。

6.3.3 塗膜系床版防水層 ー 道路橋床版防水便覧(平成19年3月)(公社)日本道路協会

「反応樹脂型」
主剤と硬化剤の2成分系の液体を混合し、化学反応によって硬化させ防水層を形成する方式です。材料によって機械施工と人力施工に分かれます。

塗膜系床版防水層のうち、市場単価が適用可能なのは「アスファルト加熱型」で”人力施工”の場合のみです。

市場単価が適用できない場合

シート系や塗膜系以外など複数の防水材料を組み合わせて用いる工法の場合は市場単価で積算することができません。

例を挙げると、東北や北海道で採用が進んでいる「複合防水層」と、NEXCO規格の「グレードⅡ」相当の床版防水層の場合です。

NEXCO規格のグレードⅡはNEXCOの構造物施工管理要領の床版防水層(グレードⅡ)の要求性能を満足する工法のことを指します。なおグレードⅡは、一般的なシート系や塗膜系の床版防水と対比させて高性能床版防水と呼ばれることもあります。
「30年間に渡り性能が確保される」とされる試験方法及び試験成績を定義し、それを合格した工法のみグレードⅡとして採用されることが認められます。
グレードⅡについてはNEXCOでは積算基準があるようです。今後は国、県、市町村が扱う積算基準にも影響があるかもしれません。

国や一部発注主体の橋梁工事では、管理上重要な路線、凍結防止剤の散布の有無、凍害による影響が大きい場合など、実情に応じてNEXCO規格のグレードⅡに準じた床版防水層の採用がされることがあります。

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床版防水層を積算する時の注意点

新設の場合

コンクリート床版を新設するにあたり、床版防水層を施工する場合は「シート系」の防水層を施工するのが一般的かと思います。

理由は、シート系防水層は塗膜系と比較すると、施工時のピンホールが発生しないため確実な防水が期待できることや、床版及び舗装との接着性、床版のひび割れに対する追従性などに優れていることが挙げられます。

設計要領や手引きなどで新設コンクリート床版の防水層は「シート系」と記載されている場合が多いかと思います。

なお、便覧では「舗装厚の薄い歩道に使用するとブリスタリングが発生する可能性が高いため、歩道部でのシート系床版防水層の適用は避けたほうがよい。やむを得ず歩道部に適用する場合には、ブリスタリングの発生が比較的少ないシート系(常温粘着型)を用いる。」とされています。

歩道部の調整コンクリート下にシート系(常温溶着型)を施工した場合、舗装の熱が伝わらずに施工不良になる問題が指摘されています。(出典:東北地方における道路橋の維持・補修の手引き(案)【改訂版】平成29年8月 ー 国土交通省 東北地方整備局道路部・東北技術事務所)

東北地方における道路橋の維持・補修の手引き(案)【改訂版】平成29年8月 ー 国土交通省 東北地方整備局道路部・東北技術事務所

なお、流し貼り型であれば調整コンクリート下でも問題無いようです。

補修工事の場合

補修工事の場合は、舗装版撤去後の床版の状態により「シート系」と「塗膜系」を使い分けます。多くの場合、橋面舗装の舗装版撤去は路面切削機によって撤去されます。この場合、撤去後の床版は凹凸が大きい場合があり、「シート系」では施工不良箇所が発生する可能性が高いとして設計要領や手引きで「塗膜系」を選択可能としている場合が多いと思います。

一方、市場には床版の不陸整正に適した材料があるため、切削後の下地処理に一手間を加えればシート系の防水層が施工可能である場合もあります。
ただ、そもそも「塗膜系」の市場単価が「シート系」よりも安価であることや、日当り施工量が大きく補修工事で使い勝手が良いこともあり、補修工事では「塗膜系」を採用する事例が多いです。

「塗膜系」でも設計上は問題無いかもしれませんが、可能であるならば不陸修正費用を別途計上してでも「シート系」を採用するのも選択肢の一つかと思います。

床版防水層を施工する前の下地処理が大切

画像提供:サン・シールド株式会社 様(https://www.sunshield.co.jp/

道路橋床版防水便覧(平成19年3月)では、防水層を設置する前の下地に対して以下のことを求めています。

コンクリート床版面にレイタンス、付着を阻害する膜養生剤、塵埃、油脂などが付着していると床版と床版防水層との接着性に悪影響を及ぼすため、これらの有害物を確実に除去しなければならない。

6.2.1 コンクリート床版 ー 道路橋床版防水便覧(平成19年3月)(公社)日本道路協会

これに対し、市場単価の下地処理には、レイタンス・塵埃の除去程度の作業は含むとされています。これは、明記はありませんがレイタンスの除去はワイヤブラシがけ程度のものと推測されます。

一方、NEXCO関連の工事では、グレードⅡの床版防水層が施工されることが多いためか、舗装版の撤去後にショットブラストをかけ、残存防水層やレイタンスなどの撤去をしっかりと実施する事例を多く見かけます。

一般の橋梁補修工事においても、床版の状態によっては研掃作業が望ましい場合があります。
ただ、予算の関係や業者の確保などに課題があり、多くの場合は清掃程度で防水層が施工される場合が多いです。

発注時点では実際の床版上面の状態は分からないため、当初設計より研掃費用を計上することは多くの場合で困難だと思います。
研掃について、防水層の施工直前に指示したとしても施工業者さんは急に手配することは困難ですので、工事着手時に「床版の状態によっては研掃作業が必要と考えている」ことを工事受注者に伝え、施工計画段階で実施の是非についてあらかじめ打ち合わせておく必要があります。

導水管と端部処理

市場単価を計上する場合、導水管と端部処理材の材料費については別途計上する必要があります。

これについて、特に端部処理の数量計上には注意が必要です。市場単価では「端部処理の費用を含む」とされており、端部処理部分については除いた面積を設計数量としなければなりません。

ここで、国土技術政策総合研究所から出ている資料である「土木工事数量算出要領(案)」から、床版防水層について記載されている部分について引用掲載します。

第3編(道路編)1章 舗装工 1.11 橋面防水工 ー 令和2年度(4月版)土木工事数量算出要領(案)ー 国土交通省

上記、赤線で明示しましたが、数量算出要領においても「施工面積には、端部処理の立上り面積は含めない」とされています。したがって、正しい数量は

橋面防水工の施工面積(m2) = 橋面舗装の面積(m2)

となるのが、一般的です。(分離帯などが無い場合)

数量拾いをされる担当者によっては、親切に”端部処理の立ち上がり分の面積”まで考慮して数量拾いがされている場合があります。
この場合、そのままの面積で市場単価を計上してしまうと、端部処理分が二重計上になってしまいます。注意してください。

導水パイプの設計について補足情報です。

横断方向に設置した導水パイプについて、伸縮装置の後打ちコンクリート部分との境界で、舗装が剥離して導水パイプが露出し、床版端部の漏水原因となっている事例が確認されています。

東北地方における道路橋の維持・補修の手引き(案)【改訂版】平成29年8月 ー 国土交通省 東北地方整備局道路部・東北技術事務所

便覧では横断方向にも導水パイプを設置することになっていますが、重交通路線の場合は設置の是非について検討する必要があるかもしれません。

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導水管と目地材についての補足情報

導水管について

導水管の材料については、「ステンレス製」と「樹脂製」があります。ステンレス製が一般的な印象がありますが、近年では樹脂製が採用される事例も多くなっています。

なお、材料単価については樹脂製の方がm当たり単価は安いです。

ステンレス製

ステンレス製はスプリング状になっている製品です。

床版排水システムカタログ ー 株式会社橋梁メンテナンス

代表的な製品名
・ドレイナーⅡ型(株式会社橋梁メンテナンス)
・クラドレンC・CZ(クラレプラスチックス株式会社)
など

なお、歩道の調整コンクリート内に設置する場合などは、被覆されたものを使用します。
・コンクリートセイバーⅠ型(株式会社橋梁メンテナンス)

樹脂製

樹脂製はペットボトル樹脂のリサイクルなどによって製造されている製品です。舗装版撤去する際の切削作業への配慮から樹脂製導水管を設計で指定する場合も多くなっています。

クラドレンP-V クラレプラスチックス株式会社 ホームページより

代表的な製品名
・クラドレンP-V(クラレプラスチックス株式会社)
・スルードレーン(ダイプラ株式会社)
など

導水管の物価本の単価掲載について、以下に情報を載せておきます。

建設物価ではP.224付近に掲載があります。
(コンクリートセイバーのみP.332付近)
索引から検索する場合は「排水用導水管」と調べてください。

積算資料ではP.336付近に掲載があります。
索引から検索する場合は「排水用導水管(道)」と調べてください。

目地材について

目地材については、一般的にはアスファルト舗装に用いる目地材と同様のものを計上します。

代表的な製品名
・セロシールSSテープ(ニチレキ株式会社)
・RCシール(東亜道路工業株式会社)
・ボンドテープ(アオイ化学工業株式会社)

同サイズ規格のものであれば機能的にはほぼ同じものです。設計での指定が特に無ければ、価格比較して一番安価なものを計上しておけば問題ないと思います。

目地材の物価本の単価掲載について、以下に情報を載せておきます。

建設物価ではP.220付近に掲載があります。
索引から検索する場合は「道路舗装材」と調べてください。

積算資料ではP.539付近に掲載があります。
索引から検索する場合は「目地材(土)」と調べてください。

【番外】スラブドレーンについて

スラブドレーンについては、下記の記事でまとめましたのでこちらをご覧ください。

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最後に

現時点(令和2年12月)の道路橋床版防水層のバイブルは、「道路橋床版防水便覧(平成19年3月) ー (公社)日本道路協会)」です。

ただ、平成19年に発行されてからこれまでに改定が無く、現在までの技術の進展と知見の蓄積について情報発信するため、土木学会より「道路橋床版防水システムガイドライン 2016 鋼構造シリーズ 28 ー 土木学会」が発行されています。

平成19年当時からは、床版上面の土砂化についての劣化が顕在化したことや、NEXCO規格のグレードⅡ高性能防水層の施工が進んでいることなど、床版防水を取り巻く社会状況も変化しています。この辺りも踏まえた内容となっていますので、ご一読されることをおすすめします。

特に、便覧は既設床版への防水層の施工について参考になる情報が少ないので、こちらのガイドラインを読んで頂くことがおすすめです。

コンクリート診断士を受験される方にとっても、参考となる情報が多く掲載されています。

最後に現時点の床版防水層を取り巻く状況を整理したいと思います。

(1)NEXCO総研が業界を牽引
(2)土木学会が情報を補完しながら一般に情報提供

という状況です。最新状況については、道路構造物ジャーナルNETさん(http://www.kozobutsu-hozen-journal.net/)が詳しいのでそちらを見てください。
「床版防水」とサイト内キーワード検索するだけで、山のように情報が出てきます。

現時点でホットな話題は、
・グースアスファルト混合物の床版防水層への活用方法の模索
・橋面舗装へコンクリート舗装を適用する場合の利点
こんなところが話題になっているかと思います。

以上で、床版防水層の積算方法についての記事を終わります。

なお、今回の記事作成にあたっては、サン・シールド株式会社 様(https://www.sunshield.co.jp/)より工事写真を提供して頂きました!

大変ありがとうございました!

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ここまで記事を読んでくださってありがとうございました!

それでは!

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