仮設材を返却する際のスクラップ長についてまとめました。
スクラップ長は土木工事積算においては理解しておかなければならない項目の一つです。
土留めや仮橋・仮桟橋といった重仮設工における正確な積算のため、中でも特に、設計変更を正しく精算するために必要な情報です。
この記事では以下のことについて書いています。
・スクラップ長とは
・スクラップ長についての情報提供
1)「建設物価」と「積算資料」より
2)仮設構造物工指針(平成11年3月)より
3)各発注主体が設計要領などを出している場合の例
スクラップ長とは
スクラップ長とは、リースで借りた重仮設材を返却する時に”全損スクラップ”とする判断基準となる長さです。
一般に、「リース契約」は借りたものを返却することを前提とした契約です。一方で、土木で用いる鋼矢板やH形鋼といった重仮設材は、溶接することで再生利用可能であるという特徴を有しています。
この特徴に対し、土木工事における重仮設材のリース契約では、工事途中でリース材の一部分を切断・欠損した場合においても返却時に「一定の長さ」が残っていれば不足した分の弁償金を支払うことで、仮設材を返却・精算することが可能な契約形態を採っています。
ここでいう、「一定の長さ」とは、”リース業者が返却された仮設材同士を溶接で継いだりなどして再生・再リースすることができると判断している長さ”になります。
この「一定の長さ」について積算基準では便宜上”スクラップ長”と呼んでいます。
このスクラップ長は契約形態・地域・期間など不確定な要素があり、一定の判断基準となる資料を根拠に積算をする必要があります。
(補足情報:(一社)重仮設業協会が「保有長、スクラップ長一覧表」について策定を行って発注官公庁、設計コンサルタント、顧客向け資料として提供しているようですが、対外的に公表されている資料は見つけられませんでした。情報についてご存知の方がいらっしゃいましたら情報提供をお願い致します。)
これについては、
・物価本(建設物価/積算資料)に記載されているスクラップ長
・道路土工 仮設構造物工指針(平成11年3月)ー (社)日本道路協会の巻末に記載されている参考資料
・各発注主体が発行している設計要領、手引き、積算参考資料 など
を根拠として用いることが一般的です。
(上記については、この記事の後半部分で参考資料をまとめておきます。)
工事進行の結果、このスクラップ長未満の仮設材が発生する(した)場合は、工事価格からスクラップ控除して、リース業者には不足分弁償金を支払うものとして積算をします。
記事作成のため各文献にあたりましたが、スクラップ長について明確に定義している文章はありませんでした。よって、ここに掲載の文章は当サイトのオリジナルです。
より正しい文章がありましたらご指摘ください。修正対応致します。
スクラップ控除については以下の記事で詳しくまとめています。
スクラップ長についての情報提供
「建設物価」と「積算資料」
(一財)建設物価調査会が発行している「建設物価」及び(一財)経済調査会が発行している「積算資料」から、スクラップ長について記載されている部分についてまとめます。
「建設物価」
●鋼矢板
Ⅱ型・・・4m未満
Ⅲ型・・・5m未満
Ⅳ型・・・8m未満
ⅤL型・・・9m未満
●軽量鋼矢板
2型・・・2.5m未満
3型・・・2.5m未満
●H形鋼(広幅系列)
H-200×200・・・4m未満
H-250×250・・・4m未満
H-300×300・・・5m未満
H-350×350・・・6m未満
H-400×400・・・6m未満
●H形鋼(中幅系列)
H-594×302・・・7m未満
●山留材
H-250・・・3m未満
H-300・・・3m未満
H-350・・・3m未満
H-400・・・3m未満
「積算資料」
●鋼矢板
Ⅱ型・・・4m未満
Ⅲ型・・・5m未満
Ⅳ型・・・8m未満
ⅤL型・・・9m未満
●軽量鋼矢板
2型・・・2.5m未満
3型・・・2.5m未満
●H形鋼(広幅系列)
H-200×200・・・4m未満
H-250×250・・・4m未満
H-300×300・・・5m未満
H-350×350・・・6m未満
H-400×400・・・6m未満
●H形鋼(中幅系列)
H-594×302・・・7m未満
●山留材
H-250・・・3m未満
H-300・・・3m未満
H-350・・・3m未満
H-400・・・3m未満
「建設物価」も「積算資料」もスクラップ長に関する記載は全く同じでした。両誌を毎度両方調べる必要はありませんので安心してください。
なお、どれも「〇〇m未満」とありますので、「〇〇mちょうど」の場合は返却可能と判断します。
仮設構造物工指針(平成11年3月)
仮設構造物工指針(平成11年3月)ー (社)日本道路協会では巻末の参考資料で「標準保有長さ」と「最小長さ」の一覧表が記載されております。
この「最小長さ」を”スクラップ長”の判断根拠として積算を行う場合もあります。
上表で赤文字で追記載した箇所は、発行元より訂正があったものです。
(参考URL:https://www.road.or.jp/books/corrigenda/index.html)
上表で青線で囲んだ箇所は、「建設物価」「積算資料」の物価本両誌と記載が異なる部分です。軽量鋼矢板3型のみ物価本とスクラップ長が異なりますので注意してください。
各発注主体が設計要領などを出している場合
各発注主体の設計要領などでスクラップ長について定義している場合、前述した2つの方法に依らずにこちらを優先して積算根拠とする必要があります。具体例として、国土交通省中部地方整備局の道路設計要領(設計編)第13章 仮設計画から当該箇所を転載します。
上記の例ではスクラップ長は、建設物価/積算資料に掲載されているものと同じでした。それ以外、標準長については若干ですが物価本もしくは指針と相違している部分が見受けられます。
この例は中部地方整備局の場合でしたが、ご自分の所属機関で上記のような文書が存在する場合はそちらを優先する必要がありますので注意してください。
最後に
以上で、スクラップ長についてのまとめの記事を終わります。
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