今回は、構造物が関わる土木工事には必ず出てくる作業土工の考え方についてまとめました。
発注者として積算する方は『掘削』と『床掘り』の使い分けは、土木積算をする上で最初に覚える項目だと思います。
また、設計で数量拾いをする場合も、発注者積算を着地点とした数量拾いを行ことで納品時の手戻りが最小になります。
ポイントは「工事目的」と「施工基面」です。
作業土工とは
作業土工の定義
作業土工とは、構造物の築造又は撤去を目的とした土工です。
掘削と床掘の違い
掘削と床掘の違いは、国土技術政策総合研究所から出ている資料である「土木工事数量算出要領(案)」が分かりやすいです。これは、各地方整備局が発行する数量算出要領の元になっている資料です。以下に定義について引用掲載します。
「掘削」とは、現地盤線から施工基面までの土砂等を掘り下げる箇所であり、「埋戻し」を伴わない箇所である。
2-1-1 令和6年度(4月版)土 木 工 事 数 量 算 出 要 領(案) ー 国土交通省
また、「床掘り」とは、構造物の築造又は撤去を目的に、現地盤線又は施工基面から土砂等を掘り下げる箇所であり、「埋戻し」を伴う箇所である。
ちょっと固い文章なので、整理します。
掘削と床掘はどちらも「土砂などを掘り下げる」ことは共通です。
掘削
・施工基面より上
・「埋戻し」を伴わない
床掘り
・施工基面より下
・「埋戻し」を伴う
実際に図を見た方が分かりやすいので、引用します。
ポイントは施工基面です。赤線でマーキングしました。


この場合は、
Aは施工基面より上で、埋戻しを伴わないので「掘削」
Bは施工基面より下で、埋戻しを伴うので「床掘り」
B’は施工基面より上ですが、構造物築造を目的に行われる土工部分であり、埋戻しを伴いますので「床掘り」となります。


この場合は、
Aは施工基面より上で、埋戻しを伴わないので「掘削」
Bは施工基面より下で、埋戻しを伴うので「床掘り」
ブロック積背面については埋戻しではなく裏込材料です。裏込材料は出来形管理対象になるので工事目的物です。よって、作業土工にあたらない範囲なので「掘削」という考えなのだと思われます。


この場合は、
Aは施工基面より上で、埋戻しを伴わないので「掘削」
B’は施工基面より上ですが、構造物築造を目的として余掘りする部分であり埋戻しを伴います。こちらは「床掘り」として集計すると要領では書かれています。
作業土工の断面(国交省 数量算出要領(案)より)
作業土工の断面について紹介します。
詳しくは国土技術政策総合研究所から出ている資料である「土木工事数量算出要領(案)」を見てください。




積算条件に一致しない不適切な数量拾いがされている場合は土量について再度算出作業が必要になります。手戻りになりますので、「積算条件ごとに分けた土量集計がされているかどうか」を設計成果受け取り時にしっかりと確認してください。
設計変更での扱い
床掘した発生土の利用基準
床掘土砂についてはヤード内に仮置きしておき、できる限り埋戻しに使用することが望ましいです。
この場合の残土量の計算式については以下の通りとなります。
残土量(m3)= 掘削(床掘)土量(m3)− 埋戻し土量(m3) ÷ 土量変化率 C
一方、実施工では土質や施工時期によっては埋戻しに利用困難な場合があるかと思います。
作業土工は任意施工なので、発注時との現場条件の相違がなければ基本的には変更出来ないのですが『発生土が利用不可であるという現場条件相違』については証明できます。
判断基準としては国土交通省の通達で「発生土利用基準について」という通達が出ていますのでこれを見てください。
以下は、「発生土利用基準について」の中から重要項目についてまとめておきます。
なお、重要な項目について赤枠で囲わせて頂きました。


上記通知文に目を通して頂ければ分かりますが、国土交通省の「発生土利用基準」では建設発生土をコーン指数と土質の工学的分類によって「第○種建設発生土」と区分します。
【第1種建設発生土】
・砂、礫及びこれらに準ずるもの
【第2種建設発生土】
・砂質土、礫質土及びこれらに準ずるもの
・コーン指数800以上
【第3種建設発生土】
・通常の施工性が確保される粘性土及びこれらに準ずるもの
・コーン指数400以上
【第4種建設発生土】
・粘性土及びこれらに準ずるもの
・コーン指数200以上
【泥土】
・コーン指数200未満
第2種建設発生土では、評価がすべて「◎」になるため埋戻し、裏込め、盛土など利用する場合そのまま使用可能と定義されています。
一方、コーン指数800未満の第3種建設発生土では、「工作物の埋戻し」「土木構造物の裏込め」「路床盛土」では「○」となり、適切な土質改良(含水比低下、粒度調整、機能付加・補強、安定処理等)を行えば使用可能なものととされています。
それより下のコーン指数400未満の第4種建設発生土ではさらに発生土利用のためには条件が悪くなります。
条件を整理して以下にまとめます。
・第2種建設発生土(コーン指数:800以上)はそのまま発生土利用が可能
・第3種建設発生土(コーン指数:400〜800)は適切な土質改良を行えば使用可能
・第4種建設発生土(コーン指数:400未満)は条件が悪い
一般的に普通ブルドーザ(15t級)でのトラフィカビリティーはqc=500kN/m2必要であり、これ以下の場合はローラーで転圧するなどの通常施工が難しくなります。

含水比低下(曝気乾燥)を行ってもコーン指数がqc=500kN/m2を下回る場合は、通常施工が困難として発生土利用不可と判断して良いと思います。
この場合の埋戻し土は追加で土質改良する場合と購入土とした場合で経済比較し、経済的な方を選択します。

なお、コーン指数200未満の泥土は産業廃棄物です。通常のダンプトラックによる運搬が難しく、専用の運搬機械により運搬します。
作業土工は任意施工
作業土工は出来形を求めないため、施工手間については現場条件の相違がなければ設計変更対象になりません。
任意施工であるため小さく床掘りしても、土留めを設けて床掘りしても自由です。

ただ、計画よりも著しく深堀るなど発注者の想定を超えた範囲まで床掘りする場合は別途協議して承諾を得る必要があると思われます。
最後に
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