プルーフローリングについてまとめました。
プルーフローリングは発注者側監督職員の立ち合いのもと実施されることが多い品質管理試験です。
今回の記事内容は、主に工事監理に携わる発注者側監督職員向けの内容です。
内容としては、
・プルーフローリングの試験方法と注意点
・プルーフローリング試験結果報告書様式例の掲載
・ベンケルマンビームによるたわみ量測定の問題点
・発注者側監督職員の問題点
などをまとめました。参考にしていただけますと幸いです。
プルーフローリング試験を路床・路盤の施工完了時の「儀式」だと思っていないでしょうか。
プルーフローリングは「試験」です。
プルーフローリングとは
プルーフローリング(Proof rolling)とは路床・路盤の完成時に実施される追加転圧及び品質確認試験です。施工時に用いる転圧機械と同等以上の締固め効果を有するタイヤローラやトラックを走行させて実施します。目的は主に2つあります。
・追加転圧することで、路床もしくは路盤面の表面の浮き上がりや緩みを防ぐ
・不良箇所を発見する
各発注者の工事仕様書で、プルーフローリング実施時に「段階確認」するとして記載されている場合が多いです。
試験方法
プルーフローリングの試験方法は、舗装調査試験法便覧〔第4分冊〕ー (公社)日本道路協会に 「G023 プルーフローリング試験方法」として記載されています。
路床の場合
以下、舗装調査試験法便覧より引用します。
(1)路床の場合
G023 プルフローリング試験方法 ー 舗装調査・試験法便覧(平成31年度版)〔第4分冊〕(公社)日本道路協会
1)追加転圧として、追加転圧用の荷重車により3回以上転圧する。
2)追加転圧の実施後、たわみ測定用の荷重車を全面走行させて、たわみを観察し、不良箇所を確認する。
3)不良と思われる箇所については、たわみ測定用の荷重車により必要に応じてベンケルマンビームによるたわみ量の測定を実施する。測定方法は、「S046 ベンケルマンビームによるたわみ量測定試験方法」に従って行う。
便覧ではたわみの確認と不良箇所の確認は、”たわみ測定用の荷重車”を用いて確認するとされています。
たわみ測定用の荷重車とは2輪駆動型のタンデム車、すなわちダンプトラックです。
ただ、実際のたわみの観察は「タイヤローラ」などの”追加転圧用の荷重車”をたわみ観察にもそのまま用いて実施されている場合が多いです。
これは、発注者の仕様書(例:国土交通省関東地方整備局土木工事施工管理基準及び規格値 品質管理基準及び規格値(案))に「荷重車については、施工時に用いた転圧機械と同等以上の締固め効果を持つローラやトラック等を用いるものとする。」と記載があることが理由です。
プルーフローリング試験は発注者側監督職員立ち合いのもと実施されることが多いため、現場で「転圧機械がタイヤローラなら、プルーフローリングのたわみ観察もタイヤローラでOK」と見なされているのかと思います。この辺の関係性については理解しておいた方が良いと思います。
路床安定処理の確認でプルーフローリングを実施する場合は、強度発現を待ってから実施します。
粒状路盤の場合
(2)粒状路盤の場合
G023 プルフローリング試験方法 ー 舗装調査・試験法便覧(平成31年度版)〔第4分冊〕(公社)日本道路協会
1)追加転圧として、追加転圧用の荷重車により3回以上転圧する。
2)追加転圧の実施後、たわみ測定用の荷重車を全面走行させて、たわみを観察し、不良箇所を確認する。
3)不良と思われる箇所については、たわみ測定用の荷重車により必要に応じてベンケルマンビームによるたわみ量の測定を実施する。測定方法は「S046 ベンケルマンビームによるたわみ量測定試験方法」に準ずる。
路床・粒状路盤と分けて記載されていますが、内容はほぼ同じです。
過去の便覧を見ますと路床と粒状路盤で表現が違ったりしていましたので、そのなごりかと思います。
プルーフローリング試験方法
プルーフローリング試験方法例の紹介
平面管理図を用意、不良箇所があれば記入
測点No.を記入した平面管理図を用意し、不良箇所がなければ管理図に「チェックマーク」を入れていきます。
不良箇所を発見した場合はスプレーマーキングして明確にし、管理図に記入します。
プルーフローリング試験結果報告書様式
プルーフローリング試験結果報告書については各発注者から様式を指定されない場合が多く、また、報告書の提出を求める発注者もあれば、提出を特に求めない発注者もあります。
試験報告書の雛形書式のリンクを貼ろうと思いネット検索しましたが、インターネット上に良いものはありませんでした。
参考として、土木積算.com管理人が作成した試験報告書様式例を掲載します。自由に使ってください。
発注者によっては、プルーフローリング試験報告書様式を公表している場合もあります。その場合は、そちらの様式を使用した方が良いです。
不良箇所の処置
不良箇所を発見した場合は処置が必要です。
良質土置き換えもしくは安定処理を実施し、再度プルーフローリング試験を実施するのが一般的かと思います。
発見した不良箇所は、相対的に支持力が不足している箇所であることは間違いありません。他と比較して舗装面のひび割れが早期に発生するなど、維持管理を進めていく上で問題が発生する可能性が高いです。適切に処置しましょう。
ベンケルマンビームによるたわみ量測定
G023 プルーフローリング試験方法によると、不良と思われる箇所については「必要に応じてベンケルマンビームによるたわみ量の測定を実施する」とされています。
ベンケルマンビームによるたわみ量測定方法の説明
ベンケルマンビームは基準台から2m40cmの長さの測定アームを伸ばしてゼロセットし、そこに後軸片側4輪が配置されている2輪駆動型タンデム型荷重車を所定の輪荷重(5t)と空気圧(686kPa)で載荷した際のたわみ量を測定する方法です。
たわみ量測定方法については分かりました。
だけど、不良と疑わしい箇所すべてでたわみ量を測定をしていたら日が暮れてしまうよ。
プルーフローリングの転圧車両とは別に、積載量を調整したダンプトラックを用意しなければならないし、しかも荷重車のタイヤの空気圧の調整が必要だなんて。
「必要に応じて」やればいい測定項目なんだからこんなめんどくさい測定しなくていいよ。
僕は無駄だと思うから、やらなくていいって指示します。
ですよね。気持ちはものすごく分かります。
ただ、仕様書に記載されている以上、”やらなくていいと指示する”のはリスクがあると思います。舗装施工後にトラブルになった際に問題とされるかもしれません。
なお、ベンケルマンビームによるたわみ量測定は、ある程度正確なたわみ量を測定できるメリットがある一方、多数の問題点がありますのでこの際まとめておきます。
ベンケルマンビームの問題点
ベンケルマンビームの問題点を指摘している記事を引用します。
現在、道路の路床・路盤の支持力を評価するためには、目視によるプルーフローリングを実施し、不良箇所はベンケルマンビームによるたわみ量測定試験を行って最終品質の良否を判定している。しかし、この試験には、
簡易たわみ量測定機(タワミール)の実用化 ー 建設省技術事務所における技術開発 No.127 ー 建設マネジメント技術2000年9月号
(1) 荷重車通過時の輪荷重の影響により,ベンケルマンビームの支持脚が沈下する
(2)荷重車(8t シングル車)の減少により調達が困難である
(3)複輪の荷重調整が難しい
(4)荷重車の走行速度にバラツキがある
(5)試験作業の安全上の問題
(6)試験条件を満たすために荷重車を過積載にする必要がある
などの問題点が指摘されている。
上記の様に、ベンケルマンビームによるたわみ測定方法について問題点が認識され、代替する出来形管理手法の開発も試みられました。
しかし、どの計測方法も全国的に普及するような標準化には至らず、ベンケルマンビームによるたわみ量測定が依然として路床・粒状路盤管理の標準的な測定方法として取り扱われています。
ベンケルマンビーム測定器が段階確認時に用意されていない
段階確認でプルーフローリング試験を行う際、ベンケルマンビームによるたわみ量測定器を用意している施工業者さんはかなり少ないと思います。
測定器の用意がない場合、不良と思われる箇所があったとしても、たわみ量を測定することができません。
施工業者さんがベンケルマンビーム測定器を都度用意しない理由は以下が考えられます。
・試験機が嵩張る
・保有しているリース業者が少ない
・工事仕様書で必須の品質管理試験項目とされていない
・正確なたわみ量を知るためには荷重車のキャリブレーションも必要
・用意したところで、使われる場面がほとんどない
用意しても使われない最大の理由はこの次です。
発注者側がたわみ量の管理値を示せない
路床や粒状路盤のたわみ量は表面付近の含水状態によって大きく左右するため、含水比などとセットで評価しなければ優劣について評価できません。
そのため「たわみ量〇〇mmまでなら合格」という判断基準を発注者側から受注者に示すことが困難です。
これがベンケルマンビームによるたわみ量測定が実施されていない最大の理由です。
判断基準 → 工事監督職員の主観的判断
上記理由により、プルーフローリング試験は目視による不良箇所の発見に重きが置かれている状況です。
次項で詳しく示しますが、不良箇所の判断は工事監督職員の主観的な判断に委ねられています。
従って、工事監督職員の経験や知識などの能力差によって判断が左右されるという問題点があります。
発注者側工事監督職員の問題点
試験実施の目的及び方法を理解していない人が多い
いきなり本題に入ってしまいますが、「プルーフローリング試験」について試験方法の目的と方法を理解しないまま段階確認に臨場している方が多い印象です。
プルーフローリング試験を路床・路盤の施工完了時の「儀式」だと思って臨場していないでしょうか。
プルーフローリングは「試験」です。
目的は「不良箇所の発見」
プルーフローリング試験の目的は、追加転圧と不良箇所の発見です。
不良箇所を発見するためには、「優良箇所」と「不良箇所」の差が大きい状態で試験実施することが望ましいです。
プルーフローリング試験した際の荷重車によるたわみ量は、含水比に大きく影響される特徴があるため、これを理解した上で試験実施します。
試験を行うに際しては、荷重車を走行させる前に路床、路盤面の含水状況を観察して、できるだけ一様な含水条件の路床、路盤面で行うようにし、降雨直後の含水比が高い状況にある路床、路盤面での試験は避ける。また、乾燥している路床、路盤面に対しては、試験開始の半日ほど前に散水して、路床、路盤面を湿潤な状態にしておいて試験を行う。
注意事項(1) ー G023 プルフローリング試験方法 ー 舗装調査・試験法便覧〔第4分冊〕(平成31年度版)(公社)日本道路協会
プルーフローリングにより、締固め不良箇所を発見し、是正することができるのは、その土の含水比が締固めに対して適当な範囲内にある場合であり、土が締固めの最適含水比からか乾燥側または湿潤側に大きくかたよっている場合には、以下のようなことが考えられるので、試験に際しては路床、路盤面の状況に注意しなければならない。
注意事項(4) ー G023 プルフローリング試験方法 ー 舗装調査・試験法便覧〔第4分冊〕(平成31年度版)(公社)日本道路協会
1)最適含水比から乾燥側に大きくかたよっている場合
締固め不足であっても大きなたわみも生じなく、非常に良好な外観を呈するため、良好に締め固まっていると誤った判断をしやすい。
2)最適含水比から湿潤側に大きくかたよっている場合
土の含水比がこの状態にあれば、プルーフローリングにより、この状態を見極めることができる。一方、転圧のしすぎで過剰転圧(オーバーコンパクション)となり材料の強度を下げてしまう可能性がある。
最適含水比よりも乾燥している場合は不良箇所を発見することは困難です。
便覧では、注意事項として乾燥している路床、路盤面に対しては、試験開始の半日ほど前に散水して、路床、路盤面を湿潤な状態にして試験を行うとされています。
タイヤローラには散水器が付いていますので、散水しつつプルーフローリング試験を実施する方法もできます。ただ、これは表面付近にしか作用しない方法ですので表面より深い層の不良箇所の発見は困難です。
晴れている日が良いわけではない
今日はカラカラに晴れているから、プルフ日和だね!
たまに、このような方がいらっしゃいます。
段階確認可能というだけで「プルーフローリング日和」ではありません。乾燥している場合は、段階確認の半日ほど前に散水を実施するよう受注者に要望しましょう。
何をもって段階確認とするのか
工事監督職員の考え方次第
まずは、プルーフローリング試験方法についてよく読み、目的と方法を理解しましょう。
再度紹介しますが、プルーフローリング試験方法は舗装調査試験法便覧〔第4分冊〕ー (公社)日本道路協会に 「G023 プルーフローリング試験方法」として記載されています。
たわみ量の管理値を示せるなら示す
不良箇所を定義するため、可能であるならばたわみ量の管理値を示すのが理想です。
一方で、
・ベンケルマンビームが普及していない
・含水比などの現場条件を考慮したたわみ量を示す必要がある
といった理由があることから、たわみ量の合否判定基準を示すのも困難ですし、さらに現場レベルで運用するのもなかなか難しいと思います。
少し飛躍しますが、たわみ量の管理値を示すには、現場で汎用的に使える測定方法の普及も同時に必要であると考えます。
画像解析によってたわみ量の算出を行うと同時に、簡易的な含水比測定方法を組み合わせるなど、近年の技術革新を応用した評価方法の開発が求められます。
雨の日はどうするの?
再度、便覧の注意事項(1)を引用します。
降雨直後の含水比が高い状況にある路床、路盤面での試験は避ける。
注意事項(1) ー G023 プルーフローリング試験方法 ー 舗装調査・試験法便覧〔第4分冊〕(平成31年度版)(公社)日本道路協会
したがって、試験中に「雨が降っていること」は問題になりません。
問題となるのは「含水比が高い状況」です。
天候ではなく、試験対象の現況の含水比と最適含水比を比較して、適切に中止判断をしましょう。
発生土材料を使用する設計の場合は発注時期に配慮する
発生土材料で路床を構築する場合、例えば北海道や日本海側の冬など常に悪天候が続く土地柄や季節の場合は、発生土の含水比が高めであることにより、締固めが困難だったりプルーフローリング試験の実施が困難な状況になることがあります。
このような場合、現場では購入土としたり、安定処理したり、下層路盤の砕石材料を路床にも食い込ませたりして工夫しながらなんとか施工します。
なお、発生土利用可否の判断基準については、下記の記事内で解説してますので参考にしてください。
そのような時期に盛土工事をすること自体が官民共に不経済となります。
工事実施計画自体に問題がありますので、発注計画を見直すべきです。
春〜秋に盛土工事が行えるような事業計画を立てましょう。
最後に
新型コロナウイルスの関係から、工事監督職員の段階確認も国工事を中心に「リモート化」の導入が進んでいます。リモート化に際して、これまで臨場しての主観的な判断に頼ってきたプルフローリング試験は今後どうなっていくのか、気になるところです。
以上で、プルーフローリングのまとめを終わります。
今回は番外編ということで、工事監理に関する記事を書きました。
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