油圧圧入引抜工法の積算についてまとめました。
油圧圧入引抜工法は無振動・無騒音で杭を所定の深度まで圧入することができる工法です。
積算基準では油圧圧入引抜機を用いた鋼矢板の「圧入」と「引抜き」作業についての積算方法が用意されています。
この記事では油圧圧入引抜工法の紹介と、積算する際の注意点などをまとめました。
この記事は以下のことについて書いています。
・油圧圧入引抜工法とは
・積算条件の確認
・積算する際の注意点
油圧圧入引抜工法とは
油圧圧入引抜工法とは油圧による静荷重を使って既製杭(鋼管杭や鋼矢板など)を所定の深度まで圧入する工法です。
すでに地中に押し込まれた杭もしくは矢板を数本つかみ、その引抜抵抗力を反力として次の杭を地盤に押し込みます。
積算基準では油圧圧入引抜機を用いた鋼矢板の「圧入」と「引抜き」作業についての積算方法が用意されています。
実施工では鋼矢板のほか鋼管矢板も圧入機械で施工することがあります。
積算基準に記載されているのは使用実績の多いU型鋼矢板とハット型鋼矢板に限られており、鋼管矢板については適用外です。
【積算基準上の位置付け】ー 無振動工法
鋼矢板の施工方法は代表的なところでは以下の選択肢があります。
・電動式バイブロハンマ
・油圧式バイブロハンマ
・油圧式杭圧入引抜機
このうち、油圧式杭圧入引抜機による施工方法は積算基準の鋼矢板施工法選定表(参考)で「無振動」に位置付けられています。
周辺に民家や高齢者施設がある場合など、騒音・振動に配慮する必要がある現場条件ではこの施工方法一択です。
技研製作所
油圧圧入引抜工法については株式会社技研製作所がこの分野のリーディングカンパニーです。
圧入原理を用いた油圧式杭圧入引抜機「サイレントパイラー」を開発・販売しています。
株式会社技研製作所は高知県に本社を持つ優良企業です。
「サイレントパイラー」は油圧式杭圧入引抜機において9割を優に超えるシェアを持っています。
鋼矢板を圧入する場合、ほぼこの機械を用いて施工されると思って間違いありません。
積算条件の確認
積算に必要な条件は
・Nmax
・陸上施工 or 水上施工
・鋼矢板型式
・圧入長
・継施工の有無
の5つです。
Nmax
圧入する上での最大N値です。
ボーリング調査した際の標準貫入試験結果などから、圧入する深さ範囲での最大N値とします。
Nmaxが25以下は通常編成
Nmaxが25〜50以下はウォータージェット併用
Nmaxが50より大きい場合は硬質地盤専用機
による施工を想定して積算します。
陸上施工 or 水上施工
陸上施工の場合はラフテレーンクレーンが歩掛に含まれます。
水上施工の場合はクレーン付台船や引船が歩掛に含まれます。
鋼矢板型式
鋼矢板型式の違いにより、日当り施工枚数が変わります。
日当り施工枚数は歩掛に直接影響します。
圧入長
圧入する長さです。
矢板長とは異なりますので注意してください。
鋼矢板の掴みしろ分
圧入長については、鋼矢板の掴みしろ部分について考慮する必要があります。
反力チャックの掴みしろ分は積算基準では以下の長さが標準とされています。
U型鋼矢板・・・500mm
ハット型鋼矢板・・・550mm
また、実施工では施工基面と矢板天端高の関係から、地盤と施工機械が干渉する場合は筋堀りして施工します。これについては積算基準では以下のようにするとされています。
Nmax≦50・・・反力チャックの掴みしろと同じ長さ
50<Nmax≦600・・・1,000mm
したがって、矢板長=圧入長ではありませんので注意してください。
なお、筋堀りの下端より施工基面が低くなる場合は、筋堀り不要となるため考慮は不要です。
筋堀りについて詳しく解説されている記事がありましたのでリンクを張っておきます。
筋掘りの幅と深さについて ー 土保産業株式会社(https://tsuchiyasu.co.jp/news/news-20220203.html#)
継施工の有無
必要な鋼矢板長さに対して、1本もので施工できない現場条件である場合は継施工について考慮する必要があります。
具体例としては以下の条件に当てはまった場合です。
・リース標準長以上の矢板長さが必要な場合
・車両制限令の許可限度を超えてしまい1本もので搬入できない現場条件である場合
・上空制限を受けるため分割して施工する必要がある場合
リース標準長については以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
積算する際の注意点
油圧式杭圧入引抜機の据付け・解体の費用計上を忘れないように
油圧式杭圧入引抜機の据付け・解体の費用計上を忘れがちです。
現場内で移設が発生する場合は、移設回数分の計上が必要になりますので注意してください。
反力矢板/反力架台の費用
油圧圧入引抜工法は、既に打ち込まれた杭の引抜抵抗力を反力とするため、施工始めの数本分についてはバイブロハンマなどで施工するか、反力架台で対応することになります。
反力架台が使用可能である場合は反力架台で施工しますが、水上施工など反力架台が設置できない場合はバイブロハンマなど他の工法で反力矢板を設置する必要があります。
この場合、反力矢板分の施工費用の計上が必要です。
反力架台の費用については、油圧式杭圧入引抜機の据付け・解体の費用に含まれています。
足場用の敷鉄板施工費は歩掛の諸雑費率に含まれる
施工足場用の敷鉄板については、圧入もしくは引抜き歩掛の諸雑費率に含まれています。そのため、別途計上する必要はありません。
よく締まった砂質地盤 or N値が高い場合は歯が立たない
ウォータージェットの使用
表面が固く締め固まっている場合や、締まった砂質地盤、N値が高い地盤である場合は通常編成の機械では歯が立たないことがあります。
この場合、圧入する鋼矢板の先端部分に水を噴射する杭打ち用ウォータージェットを取り付け、圧入箇所周辺の地盤を緩めながら施工します。
硬質地盤クリア工法
N値が50以上となる硬質な地盤の場合は、オーガ掘削を併用した硬質地盤クリア工法での対応となります。
硬質地盤クリア工法は、通常編成と比較すると施工費が著しく高額となります。
以前はN値50以上は標準積算基準の適用外でした。そのため、協会資料をもとに積算していましたが、現在は掲載されるようになりました。
バイブロハンマ工法よりも油圧圧入引抜工法で積算した方が経済的に発注できる場合がある
バイブロハンマ工法で施工可能な現場条件においても油圧圧入引抜工法で積算した方が経済的になる場合があります。
どういった場合かというと、施工枚数が少ない場合です。
理由は電動バイブロハンマによる鋼矢板打ち込みの積算基準はクローラクレーン50〜55t吊が標準機械とされており、分解組立による初期費用がかさむためです。
実施工においてもあり得る話だと思います。施工枚数が少ない場合は予決令でいうところの「取引の実例価格を考慮した」として油圧圧入引抜工法で積算しても問題は無さそうです。
最後に
以上で、油圧圧入引抜工法の積算についての記事を終わります。
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