大型土のうについて積算に必要な情報をまとめました。
大型土のうは、仮設土留め構造物、仮護岸及び仮締切工などを設ける際に使用する建設資材です。
将来的に撤去を前提とする仮設物ですので、撤去時のことを考えた積算が求められます。
撤去時に土のうがボロボロで中詰め土砂が漏れたり、クレーン機能付きバックホウなどで吊り上げた際に吊り材がちぎれてしまうようでは安全管理上問題があります。
そして、そのような状態での撤去作業は標準積算基準の適用範囲から外れてくるかと思います。
2ヶ月以上に渡って設置する場合は、フレコンバッグ(1t用大型土のう)では耐候性に問題が生じることが多いため、『耐候性大型土のう』を使用することが推奨されます。
また、一般的なフレコンバッグ(1t用大型土のう)は最大充填重量10kNであるため、1m3の土砂は”ほぐし状態”だとしても重量オーバーです。
積算基準では土のう1個当たり1m3のほぐし土砂を入れる前提の歩掛になっていますので、フレコンバッグ(1t用大型土のう)は適用範囲外です。
大型土のう工の積算をする場合は、袋材の材料費は『耐候性大型土のう』規格のものを使用する前提で考えて良いと思います。
物価本には、耐候性大型土のう以外に”1m3の土砂”が入れられる大型土のうの単価掲載はありません。
大型土のうとは
大型土のうとは、ラフテレーンクレーンやクレーン機能付きバックホウによる機械を使用した設置が前提の大型の土のうのことです。
フレコンバッグ(1t用大型土のう)
目的:粉粒状物質の輸送
フレコンバッグ(フレキシブルコンテナバッグ)は、粉末や粒状物の荷物を保管・運搬するための袋状の包材です。
1トン程度の重量物を充填できる容積・強度のものが主流であることから、トン袋、トンバック、トンパック等と通称されます。
なお、1m3の土砂など高比重なものを詰める場合を想定した『耐荷重2トン対応(20kN)』の高強度タイプのものも市場には存在しています。
こちらは物価本には価格掲載がありません。
土木用材料としての問題点
フレコンバッグ(1t用大型土のう)を土木工事に使用するには以下の問題点があります。
・最大充填重量(10kN)を超えて土砂が中詰めされて使用されることが多いこと
・設置基準や、強度もしくは耐久性などの性能が曖昧であること
・紫外線による劣化等に伴う破損事例が多いこと(解図ー1.5 参照)
これらの問題点に対し、耐候性大型土のうは
・最大充填重量20kN
・短期仮設対応(1年)長期仮設対応(3年)の製品仕様
としています。
耐候性大型土のう
耐候性大型土のうは、土木工事にフレコンバッグ(1t用大型土のう)を用いる際の最大充填重量や紫外線による劣化の問題点を解消するために開発された大型土のうです。
紫外線による劣化を防ぐため、黒色の見た目をしています。
耐候性大型土のうの特徴
耐候性大型土のうは、以下に示すような特徴を有しています。
(1)容量1m3(袋材製品寸法:直径1100mm、高さ1100mm 程度)に対し、最大充填重量が20kNの土木用大型土のうであり、従来から用いられている大型土のうに比べて、耐荷重に優れている。
(2)屋外での一般使用条件の下で1年あるいは3年経過後においても所定の強度が保持される耐候性を有する。
(3)袋材は、適正な製造管理のもとに工場生産されており、品質及び性能が確保されている。
(4)袋材は、柔軟な合成繊維素材であるため、軽量取り扱いが容易であり、また、繰り返し吊上げ・吊下ろしに対する十分な強度を有している。
(5)施工に際しては、専門工や熟練工を必要とせず、機械化施工により工期の短縮及び経済性に優れている。
(6)袋体の設置時には、積み重ねが可能であり、所定期間内においては移動・再設置が容易かつ複数回の転用が可能である。
引用:1.2.1耐候性大型土のう 「耐候性大型土のう積層工法」設計施工マニュアル[改訂版]平成29年10月ー(一財)土木研究センター
耐候性大型どのうは、土木工事での使用に適した製品特性を有しています。
黒い土のう=耐候性土のうではない
黒い土のう=耐候性土のうではありません。
「耐候性大型土のう」は(一財)土木研究センター 「耐候性大型土のう積層工法」設計施工マニュアルに準拠した性能を有しており、耐候性大型土のう協会の認定を受けた製品です。
それ以外の黒色土のうは、自社基準で製造された土のうであり「耐候性大型土のう」とは異なります。
積算する際ももちろんですが、特に実施工での材料発注や材料承諾をする場合には注意が必要です。
積算する際の注意点
作業半径に注意!
6m以上20m以下はラフテレーンクレーン
積算基準に記載の通り『作業半径が6m以上20m以下』はラフテレーンクレーンによる施工となります。
現場条件を良く勘案し、適切な積算が必要です。
土砂を中詰めした場合の重量
土砂を中詰めした場合の重量は以下の通りとなります。
仮に、大型土のうを容積1m3として、土砂の単位重量を積算基準より1,800kg/m3とすると、
1m3/1.2(ほぐし)×1800/1000×9.8=14.7kN/m3となりますので、砂質土の場合は積算基準とも概ね一致します。
撤去時の処分費
袋材の処分費は『廃プラスチック+割増料金』
積算基準では、中詰め土砂排出の『袋材の処分費』と『残土処理費』は別途計上とされています。
この『袋材の処分費』については、意外に処分費がかさみます。
なぜなら、使用後の大型土のうの袋材に「土砂がこびりついているため」です。
撤去時には以下の点に注意してください。
・土砂付きの大型土のう袋材を廃プラスチックとして専門業者に引き取ってもらう場合の処分費用は割増料金を請求される場合が多い
・土砂の付着状態によって、産業廃棄物処分重量が変化する
土のうの袋材処分費用については、あとで受注者と揉めることが無いよう費用の取り扱いについて特記仕様に記載した上で発注するのが理想です。
設計書内で土のう袋材の処分費用を計上する場合は、「処分費」ですので取扱いに注意してください。
共通仮設費対象額の3%を超える分の金額は、率計算の対象外としなければなりません。諸経費の対象額を適切に設定して積算してください。
最後に
以上で、大型土のう設置工の積算方法のまとめ記事を終わります。
記事作成作業においては『「耐候性大型土のう積層工法」設計・施工マニュアル』を一部参照しました。
こちらのマニュアルは、耐候性大型土のう積層工法の計画、調査、設計及び施工方法の基本的な考え方及び一般的な技術事項について、さらに詳しい情報が記載されております。
また、耐候性大型土のう協会のホームページでは、この記事よりもさらに詳しく解説されておりますので参考にされると良いと思います。
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