緩速載荷工法

土工
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今回は、軟弱地盤上に盛土する際の工法の一つ「緩速載荷工法」を積算する際の注意点についてまとめました。
緩速載荷工法」とは、ひとことで表すと”盛土がすべり破壊しない速度でゆっくり盛土する工法”です。

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工法と原理

軟弱地盤対策工指針より

緩速載荷工法のバイブルは「道路土工 軟弱地盤対策工指針」です。

緩速載荷工法の適用に当たっては、土工構造物の安定性を確保するよう盛土の盛土速度を設定しなければならない。

P.240『道路土工 軟弱地盤対策工指針(平成24年度版)』−公益社団法人 日本道路協会

とあります。具体的な工法の説明としては

軟弱地盤情に盛土を急速に施工すると、盛土及び基礎地盤にすべり破壊や過大な変形が発生する。緩速載荷工法は、できるだけ軟弱地盤の処理を行わない代わりに、圧密の進行に合わせ時間をかけてゆっくり盛土することで地盤の強度増加を進行させて、安定を図る工法である。

P.241(1)工法と原理『道路土工 軟弱地盤対策工指針(平成24年度版)』−公益社団法人 日本道路協会

とされています。
すべり破壊とは「荷重(盛土)によって発生するせん断力が地盤の持つせん断強度を超えた時点から地盤がすべり出す現象」です。
緩速載荷工法の要点を抜き出すと『すべり破壊を起こさないように圧密の進行に合わせゆっくり盛土する工法』とまとめることができます。

緩速載荷工法のメリット

緩速載荷工法のメリット/デメリットです

○メリット
・経済的

○デメリット
・時間がかかる


軟弱地盤対策としては、緩速載荷工法は最も費用がかかりません。
その理由は通常の盛土と施工方法が変わらないからです。

一方で、日当り施工量をセーブしながら施工することになりますので、当然ですが通常の施工よりも余計に時間がかかります。

また、施工後に万が一「沈下が全然終息しない。このままだと事業全体に影響する。」となった時に、盛土した後から地盤改良できないということもデメリットとして挙げられるかもしれません。

緩速載荷工法は盛土載荷重工法(サーチャージ)と組み合わせて施工するのが一般的だと思います。設計段階で現地盤の圧密完了にかかる時間を計算し、事業計画に適さない場合は盛土に先がけて地盤改良を選択することになります。

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施工方法

漸増載荷工法

一定の速度(概念図のVA)で緩速載荷する方法です。

段階盛土工法

通常の速度で盛土をしますが、段階的に盛土をやめて放置期間を設けます(概念図のVB)。
盛土→放置→盛土→放置の段階施工を繰り返します。

それぞれの盛土工法概念図

P.242『道路土工 軟弱地盤対策工指針(平成24年度版)』−公益社団法人 日本道路協会

盛土は上方になるほど幅が狭くなる台形断面になりますので
概念図と同様の挙動(沈下量のS字曲線)を示すかは疑問がありますが概念としては上図を見ていただければ分かると思います。

漸増載荷と段階載荷のどちらが優位なのかは示されていませんので、工程計画を作る中で現場に合わせて選択すれば良いと思います。

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施工上の留意点

薄い砂層が圧密速度に影響する

ボーリング調査で見過ごされがちな薄い砂層が排水層となることで、圧密速度は速くなる可能性があります。圧密速度が速くなることは、沈下終息も早くなりますので良い材料となります。

盛土高は高い方が圧密促進に効果的。ただし、すべり破壊に注意

段階盛土載荷工法で施工する場合、一次盛土をできるだけ高くすることで地盤の圧密促進させることができます。一方で指針では下記のように注意があります。

第一次の盛土に当たっては、施工によって地盤の初期強度が低下することや、強度増加が見込めない初期段階ではのり尻部ですべり破壊が生じやすいので、入念な動態観測が必要である。

P.242(3)設計・施工上の留意点『道路土工 軟弱地盤対策工指針(平成24年度版)』−公益社団法人 日本道路協会

法尻部は円弧すべりが発生しやすいので注意です。
地盤改良や、フィルター層が設置してあればすべり破壊は起こりにくくなります。
フィルター層についてはサンドマットの記事を参照してください。

側方地盤の変形に注意

前述の法尻部のすべり破壊に続く話ですが、載荷重によって盛土が沈下した結果、地盤内部で土砂が側方に流動して盛土範囲外の地盤が隆起することがあります。そのような事態が発生した場合の対策例を下記に示します。

・盛土をやめ、土砂を一次的に撤去(除荷)する。
・法尻部にフィルター層を設ける
・薬液注入し地盤強度上げる
・法尻に帯状に鋼矢板を打ちこむ(最終手段)

補償問題になってしまう可能性が高いですので、このような事態が生じないように事前検討が必要です。

特に盛土脇が宅地である場合、入念な検討が必要です。

動態観測して必要に応じて盛土計画を変更する

動態観測とは、盛土による沈下量の観測のことです。
地盤工学会の『JGS 1712 沈下板を用いた地表面沈下量測定』に従って観測します。

また、側方地盤の流動が懸念される場合は、沈下板以外にも変位杭などを設置して側方地盤の変形量を観測することが必要です。

動態観測の結果、予測よりも地盤が安定していることが確認されたならば盛土速度を早めたり放置期間を短くしたり盛土計画の変更を行いましょう。

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積算にあたっては

積算にあたっては、施工費用自体は通常と変わりません。
施工費以外の部分で注意が必要になるものがあります。

なお、土砂運搬については下記の記事に詳しくまとめてありますので、一度確認していただいてから積算に入ると確実かと思います。

施工費については国交省施策のi-Construction推進により、盛土工事はICT土工の試行対象とされることが多いかと思います。関係する通達や、積算基準などをよく読み込み適切に計上してください。

沈下量の動態観測費用

沈下量の観測のために”沈下板”の設置が必要になります。

地盤工学会の『JGS 1712 沈下板を用いた地表面沈下量測定』に従って観測することになりますので、補足情報として読んでおいた方が良いです。

沈下板の設置及びその後の動態観測(盛土の沈下量観測のことです)に関する費用の精算については、積算基準でガイドラインが示されておらず、各発注者ごとでも取り扱い方法が決まっていない場合がほとんどだと思います。
そのため、積算での計上の是非については曖昧なまま発注されている場合が多いのが現状です。
沈下板の設置(特に地盤改良後の盛土工事を合わせて発注する場合)は、

・沈下板の設置費用
・動態観測費

の項目について特記仕様書などで条件明示した上で発注することが望ましいです。

なお、蛇足ですが軟弱地盤の動態観測費については『全国標準積算資料 土質調査・地質調査 (一社)全国地質調査業協会連合会』に調査歩掛が掲載されています。
こちらは、調査委託の歩掛なので工事積算にはそのまま計上できませんが補足情報として書いておきます。

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最後に

以上で、緩速載荷工法に関するまとめを終わります。

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ここまで記事を読んでくださってありがとうございました!

それでは!

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