敷鉄板設置・撤去工の積算方法についてまとめました。
内容については敷鉄板の予備知識と積算する際の注意点です。
任意仮設で用いられることの多い敷鉄板ですが、任意仮設で発注するからこそ工事発注時の検討が大切です。
なぜなら、当初発注時に想定している現場条件を明確にしておかないと、工事の精算時に何に対して変更するのか”変更理由”が分からなくなるからです。
設計委託では特に検討されてなかったけど、とりあえず100枚くらい概算で計上しておこうかな。
こんな場合は要注意です!
任意仮設は現場条件の相違がなければ、基本的には変更対象にできません。
敷鉄板とは
敷鉄板とは、建設機械の走行にあたりコーン指数が足りない場合の走行性の良否(トラフィカビリティ)の確保、もしくは建設機械が走行する接地面の養生を行うために敷設する鉄板のことです。
設置目的
コーン指数が足りない場合のトラフィカビリティの確保
建設機械の走行性の良否(トラフィカビリティ)は、コーン貫入試験で求めた「コーン指数」で表されます。
コーン貫入試験は、上図の先端コーンを1cm/sの速さで室内試験用試料もしくは現地盤に貫入させ、検力計より求めた抵抗値をコーンの底面積で割った値をコーン指数qcとします。
コーン指数の値が大きいということは、よく締め固まった硬い地盤であることを表しており、すなわちトラフィカビリティが高いことを示します。
建設機械の走行に必要なコーン指数qc(kN/m2)
超湿地ブルドーザー
200以上
湿地用ブルドーザー
300以上
ブルドーザー(中型10t級)
500〜700
ブルドーザー(大型20t級)
700〜1000
ダンプトラック
1200以上
ダンプトラックの走行には、コーン指数1200以上のトラフィカビリティが求められます。不足しているトラフィカビリティを向上させるには、敷砂利や敷鉄板などの選択肢がありますが、現場条件と経済性を勘案し、適切に判断します。
建設機械走行箇所の養生
敷鉄板にはトラフィカビリティの確保のほかに、建設機械走行箇所の養生といった役割でも設置されます。
例えば、工程上の関係で施工済みの区間をブルドーザーやクローラクレーンなどクローラ系建設機械が走行する場合や、設置済みコンクリート二次製品の上を横断する場合などに設置されます。
さらに敷鉄板の下にゴムマットを敷くと、養生性能を向上出来ます。
鋼材としての性能
リースされる敷鉄板については、鋼材としては”普通鋼板”の”厚板”に分類されます。
普通鋼板は、中板以上は一般に無規格で販売されます。
敷鉄板は構造部材として使用されることを想定されておらず、無規格で流通していますので構造計算に用いることができません。
仮設限定で使う鉄板です。もし曲がったら、曲げ直して戻す。このような使い方を想定していますので、規格エキストラをかけてまで性能保証をしても意味がありません。
敷鉄板の豆知識
体積×密度=重量
鋼材全般に言えることですが、敷鉄板の重量は体積が分かれば密度をかけることで簡単に出すことができます。
国土技術政策総合研究所から出ている資料である「土木工事数量算出要領(案)」では以下のように計算式を定めています。
鋼板の基本質量は7.85とされており、体積にこの基本質量を乗ずることで簡単に重量を算出することができます。
例えば、厚さ22mmの1.524×6.096(5×20フィート)鉄板では、
22×1.524×6.096 に 7.85 をかけると、1,604kg /枚と算出することができます。
ちなみに厚さをmに直すと、0.022×1.524×6.096 に 7.85 をかけて、1.604t/枚 と算出することができます。
積算ではこちらの数字の方が使いやすいと思います。
ごっとばん、ごにじゅう
敷鉄板は加工寸法がヤード・ポンド寸法のフィート表示となっています。
1.524×3.048・・・ 5フィート×10フィート(通称:ごっとばん)
1.524×6.096・・・ 5フィート×20フィート(通称:ごにじゅう)
現場でよく使われる言葉です。
1.604・・・さて、なんの数字でしょうか
1.604は、22×1.524×6.096 敷鉄板の1枚当たりの重さ(t)です。
仮設材運搬重量の算出などで頻繁に出てくる数字ですので、暗記しておくと良いです。
【積算でよく扱う敷鉄板の諸元】
22×1.524×3.048・・・4.645m2/枚・・・0.802t/枚
22×1.524×6.096・・・9.290m2/枚・・・1.604t/枚
25×1.524×3.048・・・4.645m2/枚・・・0.911t/枚
25×1.524×6.096・・・9.290m2/枚・・・1.823t/枚
厚さ22mmが一般的な工事でよく使われます。
積算する際の注意点
敷鉄板設置・撤去工の積算をする際の注意点について記載します。
仮設材賃料の計算
賃料×日数+整備費
敷鉄板のリース費用は、リースを受ける日数に応じた賃貸料金+整備費で計算します。
なお、賃貸料金は90日(3ヶ月)、180日(6ヶ月)、360日(12ヶ月)、720日(24ヶ月)、1080日(36ヶ月)と賃料日数が長くなるほど日当りの賃料単価は安くなります。
物価本に詳しい説明がありますので、そちらをよく読んでください。
減額補正に注意!
『土木工事標準積算基準書 第5章 仮設工 ①仮設工 (1) 5) 適用区分による賃料の補正について』では、減額補正について記載されています。原文は難しいので要約すると、『リース日数が長くなる場合は日当たり賃料単価が安くなるため、もしも長く借りた方が安くなる逆転現象が発生する場合は減額補正せよ。』とされています。
例えば、敷鉄板を178日借りていた場合で説明します。
仮に、
180日以内の賃料単価を110円/枚/日
360日以内の賃料単価を105円/枚/日
とすると、
(1)178日借りていた場合:180日以内の賃料単価
178 × 110 = 19,580円/枚
(2)181日借りていた場合:360日以内の賃料単価
181 × 105 = 19,005円/枚
となり、余計に借りていた方が安くなってしまう場合があります。
逆算すると、この場合は19,005/110=172.8となり、173日以降は181日以上借りた方が安くなります。
この差額分を補正するのが減額補正です。
設計書内での取り扱いについては、各発注機関の取り決めに従ってください。
実施工では、30日補償などが発生する場合も
実施工では、数日間しかリースを受けなかった場合でも「30日補償」ということで1ヶ月分の料金を請求されることもあります。
ただ、これは決まった取り決めがあるわけではなく、工事受注者によっては請求されないこともあるため、物価本では特に記載されていません。
諸雑費率に含まれている場合がある
敷鉄板の設置・撤去費用については、歩掛の諸雑費率の中に含まれている場合があります。
代表的なものが
・油圧圧入引抜工
・場所打杭工
などで、これらは歩掛の諸雑費内に足場材(敷鉄板の設置・撤去費用)が含まれています。
詳しくは、積算基準の諸雑費の説明文に書かれています。
よく読んで、二重計上しないように注意してください。
どこまでが任意施工の範囲なのか
この問題が発生するのは、恐らく工事発注後だと思います。
全ては、「発注時に想定していた現場条件がそもそもなかった」ことが原因です。
冒頭でも書きましたが、任意仮設で発注するからこそ工事発注時の検討が大切です。
なぜなら、当初発注時に想定している現場条件を明確にしておかないと、工事精算時に何に対して変更するのか”変更理由”が分からなくなるからです。
条件明示の検討は大切です。大きな現場でも、小さな現場でも想定する現場条件について明示し、想定される仮設費用を計上した工事予定価格とすることが求められます。
これは、適切な設計変更をするためにも必要なことです。
仮設材運搬費の計上が必要
敷鉄板のリースヤードへの運搬費、積込み及び取卸しに関する費用については、設置歩掛に含まれていません。共通仮設費の運搬費として別途積み上げる必要があります。
なお、仮設材運搬費で計上するのは、敷鉄板設置・撤去工で積み上げた敷鉄板についてのみです。各施工歩掛の諸雑費率に含まれる敷鉄板については、共通仮設費率に含まれるため計上不要です。
番外編:敷鉄板設置工の変遷
【歩掛の変遷】
2020年9月現時点では、敷鉄板設置・撤去工の歩掛は、『クレーン機能付きバックホウ』ですが、2019年(令和元年度)以前は『ラフテレーンクレーン』が標準機械となっていました。
【運搬費の変遷】
過去(2010年頃)には、積算基準の共通仮設費のうち運搬費率分で計上される敷鉄板の運搬費用の取り扱い方法についての記述が曖昧だったため、
・敷鉄板の運搬費は共通仮設費率に含まれるため別途計上しない
・現場で敷鉄板を取り卸す際に同時に設置するし、積み込みと同時に撤去すればよいのだから、積込み・取卸し費用の計上は不要だろう
などのローカルな積算ルールが乱立していた時代がありました。
最後に
以上で、敷鉄板設置撤去工の積算方法のまとめ記事を終わります。
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