土木で扱う基礎についてまとめました。
この記事を読んで頂ければ、土木積算するにあたって最低限必要な基礎についての知識が身に付くと思います。
知らないまま積算することも出来ますが、理解しておくことで積算スキルの身につき方が変わると共に、現場監理のポイントが多少掴めます。
基礎の種類
土木工事で使う基礎の種類は、主に次に示す4種類です。
・直接基礎
・杭基礎
・ケーソン基礎
・矢板式基礎
このうち、直接基礎では「フーチング基礎」が、杭基礎では「支持杭」と「摩擦杭」が用いられます。
この中で工事積算で頻繁に登場するのは、直接基礎と杭基礎です。
ケーソン基礎、矢板式基礎は杭基礎で対応困難な現場条件でも確実な基礎を構築できる基礎方式です。ただし、工事費がかさむため直接基礎と杭基礎で対応可能な場合はこちらで設計します。
基礎の種類については、一度覚えてしまえば一生使えます。
この際覚えることをオススメします。
直接基礎
支持地盤が地表から浅いところにあり、その上に直接基礎を設けることを直接基礎工といいます。
土木工事では主にフーチング基礎がよく用いられます。
フーチング基礎は土木技術者の必須知識ですので覚えておいてください。構造計算ができなくとも、基礎形式について理解しておくレベルの知識は最低限必要です。
なお、フーチング基礎は杭基礎と組み合わせて使用されることも多いです。
フーチング基礎
フーチング基礎(英語名:Footing foundation)は逆さにしたTの文字のようになっています。
上から伝わる荷重を地盤に分散して伝える役目を担っています。
フーチング基礎が安定しているためには、沈下・滑動・転倒をしていない必要があります。
これを通称、「安定の3条件式」と言います。
これが釣り合っている、つまりそれぞれの総和=0である場合が「安定している」状態です。
土木の仕事をしているとよく出てくる「安定計算」という言葉は沈下・滑動・転倒について、それぞれに作用する力に対して不安定な状態になっていないか計算することを言います。
「安定の3条件式」について分かりやすく整理すると以下の関係性です。
【 沈下 】
ΣV=0(鉛直方向の力の総和)
【 滑動 】
ΣH=0(水平方向の力の総和)
【 転倒 】
ΣM=0(モーメントの総和)
ここで、ΣV = 0についてみると、上記の図で鉛直荷重Pvは、自重やフーチング基礎にかかる上載物の重量など鉛直下方向に作用する力です。例えば、橋脚のフーチング基礎を設計する場合は橋梁上部工の重量、躯体の自重や埋戻し土砂などの重量が該当します。
これに対し、Pv’は地盤支持力です。なお、地盤支持力は外力などに対して作用反作用の法則で働く反力ですので、Pvが地盤支持力を超えない限りはPv=Pv’となります。
したがって、Pvが地盤支持力を超えない限り
ΣV = Pv ー Pv’ = 0
が成り立ちます。これが沈下せず安定しているということです。
ただ、実際の安定計算では、作用する力を算出して、それに対する地盤支持力の数値が所定の安全率以内に収まっていれば「安定している」という考え方をします。安全率とは、文字通り安全のための係数です。
ΣH = 0、ΣM = 0 も同様に計算します。
フーチング基礎は鉛直荷重を地盤面に分散して伝える役目を担っており、鉛直荷重が大きい、モーメントが大きいなどの場合は、安定するためにより大きなフーチング面積が必要となります。
なお、鉛直荷重 Pvに対して、地盤の支持力Pv’が不足している場合は基本的には直接基礎は選択されることはなく、杭基礎などを組み合わせることになります。
べた基礎
直接基礎には他にべた基礎があります。
べた基礎は複数の柱や壁を広い一つの基礎板で受ける基礎方式です。
建築工事、特に住宅などで扱われることが多いですが、土木工事ではあまり登場する機会はありません。
杭基礎
直接基礎では構造物を支持できない軟弱地盤や、支持地盤が深い場所にある場合に、杭を打ち込んで構造物の重量を支持させる基礎形式です。支持杭と摩擦杭があります。
支持杭
軟弱地盤を貫通し、堅固な支持層に荷重を直接伝える杭基礎方式を支持杭と言います。
施工管理の際は、杭先端が設計で支持層と評価している層に到達していることを確認する必要があります。
打込み工法ではリバウンド量から支持力を換算推定し、
中堀り工法や場所打ち杭工法では、掘削土砂の土質をボーリング資料と比較することで支持層到達の判断を行います。
摩擦杭
杭周辺にかかる土の摩擦力で鉛直荷重を支える杭基礎方式を摩擦杭と言います。
打込み工法で摩擦杭を施工する場合は、所定の位置まで杭を打ち込むことが基本となるため、打ち止め管理などは多少容易になります。
なお、支持杭も摩擦杭も積算方法は変わりません。
ケーソン基礎
ケーソン基礎は、ケーソン(英語名:caisson)と呼ばれる底のない箱枠内部で掘削作業を行い、段階的に支持層までケーソン本体を沈め(専門用語で沈設と言います)、支持層到達後は内部を中埋めすることにより基礎構築する工法です。
剛性が高い大断面の基礎を支持層まで直接構築することができるため、大規模構造物に向きます。
ケーソン工法には、「オープンケーソン工法」と「ニューマチックケーソン工法」があります。
違いは、ケーソン内部に入り込む水の処理方法です。
水中掘削するのが「オープンケーソン工法」
ケーソン下端の掘削部の作業室の気圧を高めることで、
ドライ掘削するのが「ニューマチックケーソン工法」です。
近年はオープンケーソン工法で施工される案件は少なくなりました。
杭基礎工法が一般的になり、代替されたことによります。
一方、ニューマチックケーソンは、現代でも特に山岳部の橋梁下部工の基礎を施工する際によく用いられます。地下水への影響を最小限にしつつ、硬質な地盤にも対応が可能であることが理由です。
オープンケーソン工法
オープンケーソン工法は、水中構造物の基礎としては近代土木技術が確立して比較的初期の頃から用いられている工法です。
ケーソンは、円・楕円・長方形などの鉄筋コンクリート構造を現場打ちで作り、段階的に沈設します。
水中掘削になるのが特徴です。
オープンケーソン工法は、現代では基礎というより大口径推進工事等の立坑に使用される場合が多いかと思います。矢板式工法による土留の上位互換といったイメージです。
ニューマチックケーソン工法
ニューマチックケーソン工法は、ケーソン本体が2室で構成されるケーソン工法です。下部は加圧することにより、地下水などの流入を防ぎながらドライな状態で掘削作業を進める耐圧作業室とし、上部は、内部に水を入れて沈下荷重のコントロールに用います。コップを逆さまにして、水の中に押し込んだ時にコップ内に水が入ってこないのと同様の原理を利用した工法です。
下部の耐圧作業室がドライな状態で作業出来るため、平板載荷試験などで地盤を直接的に検査することができ、障害物の排除も容易です。
また、地下水の流入を許さずに作業するため、周辺地盤への影響を少なくできます。
ニューマチックケーソン工法は、オリエンタル白石株式会社が得意としており、ホームページで詳しく解説されています。リンクを貼っておきます。(http://www.orsc.co.jp/tec/newm_v2/ncon02.html)
気圧の高い耐圧作業室に作業員が入ることにより、ケーソン病という潜水病に似た病気にかかってしまう可能性があります。ただ、近年は、機械化が進み作業室に人間が入ることは少なくなっているそうです。
矢板式基礎
矢板式基礎は、ケーソンの代わりに鋼管矢板などで土留もしくは仮締切した内部を掘削して基礎を構築する工法です。仮締切を本設と兼用する工法で、主に港湾工事や大規模河川内の橋脚工事で用いられることが多い工法です。
矢板は断面二次モーメントの大きい鋼管矢板が用いられることが多く、環状に施工して閉合し、内部を掘削したのちにフーチングを構築します。なお、フーチング構築後は、鋼管矢板の不要部は水中切断して撤去します。
上図だとケーソン基礎に似た支持形式になります。
このような小判形は、よく用いられるスタンダードな形状です。
最後に
以上で、基礎のまとめ(入門編)を終わります。
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