【ひび割れ補修工】低圧注入工法

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共通工

ひび割れ補修工のうち、低圧注入工法の積算方法についてまとめました。

低圧注入工法を積算する上でのポイントは2つあります。

それは、「注入材使用量の計算及びロス率の取り扱いを間違えやすいこと」「そのまま積算に使える材料単価が物価本にほとんど掲載されていないこと」です。

唯一、ショーボンド建設のひび割れ注入材料単価であれば『積算資料((一財)経済調査会)別冊』に単価掲載があるため、見積もりを取らずに計上可能です。

今回の記事では、ショーボンド建設のひび割れ注入材料を用いた場合の注入材使用量の計算例なども交えてまとめました。工事発注の際に参考にして頂けますと幸いです。

また、令和2年度積算基準より、道路ボックスカルバートのひび割れ注入は「トンネル補修工(ひび割れ補修工(低圧注入工法))」で積算することになりました。

こちらについても注意してください。

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ひび割れ補修工

コンクリートのひび割れの補修工法には、主に以下に示す3つの方法があります。

・ひび割れ被覆工法
・注入工法
・充てん工法

これらの工法は、ひび割れの発生原因、ひび割れ幅の大小、ひび割れの進行性の有無、鋼材の腐食の有無によって単独あるいは組み合わせて用いられます。

低圧注入工法は、この中の注入工法に該当する補修工法です。

ひび割れ補修工法の選定

ひび割れ補修のバイブルは、(公社)日本コンクリート工学会が発行している「コンクリートのひび割れ調査、補修・補強指針-2013-」です。

ひび割れ補修の工法選定は、この本に掲載されている”ひびわれ補修工法の選定例”に従って決定されるのが一般的です。具体的には、ひび割れ幅で決まります。

【 適用可能なひび割れ幅 】
 0.2mm以下 → ひび割れ被覆工法
 0.2〜1.0mm → 注入工法
 1.0mm以上 → 充てん工法

補修材料についてはひび割れ部の挙動(コンクリート構造の膨張収縮や外的要因によるひび割れ幅の変動量)に応じて選択します。

ひび割れ部の挙動が小さい場合は「セメント系」が用いられることが多く、ひび割れ部の挙動が大きい場合は「樹脂系」が用いられることが多いです。

低圧注入工法とは

画像提供:サン・シールド株式会社 様(https://www.sunshield.co.jp/

圧縮空気、ゴムの復元力やスプリングなどを使用した専用の治具を用いて、補修材料を注入圧力0.4MPa以下の低圧、かつ低速で注入する工法です。

従来のグリースポンプを利用した手動による注入方式と比較すると以下の特徴を有しています。

・注入材量の管理が容易
・注入精度が作業員の熟練度に左右されない
・ひび割れ深部のひび割れ幅が0.05mmと狭い場合でも確実な注入が可能

低圧注入工法による補修を行うことで、防水性および耐久性の確保や、使用材料によっては躯体の一体化を図ることができます。

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積算に必要な情報及び計算例

積算に必要な情報

ここでは、土木工事標準積算基準書 第2章 9-2 構造物補修工(ひび割れ補修工(低圧注入工法))について記載します。

積算する際には、以下に示す条件を選択する必要がありますので順に解説していきます。

なお、数量については土木工事数量算出要領(案)で以下のように示されています。

1-12-3 令和2年度(4月版)土 木 工 事 数 量 算 出 要 領(案) ー 国土交通省

ここで注目して頂きたいのですが、要領ではロス率について数量に「含むのか」「含まないのか」数量拾い方について示されていません。

市場には多種多様な製品があり、加えて製品によってロス率が異なることが理由なのだと思います。

設計者が数量を拾う際、使用する製品を想定してロス率を考慮した数量拾いをする場合もあれば、そうでない場合もあります。
「ロスを含んだ数量」と「ロスを含まない数量」どちらも混在していますので、積算の際は注意が必要です。

補修延べ延長 25m未満 or 25m以上

ひび割れ補修の延べ延長が25mを境に歩掛が変わります。

25m未満では施工歩掛の単位は「1構造物当り」
25m以上では施工歩掛の単位は「10m当り」

となります。

図にすると以下のイメージです。

図. 低圧注入工法施工費グラフ

この図から分かるように低圧注入工法を数mなどで少量発注するのは不経済な場合があります。せっかく発注をするのであれば、大したことないひび割れも含めて25mに達するまで数量を見込んでも施工費はあまり変わらない積算基準になっています。

業界誌では「地方自治体は必要のないひび割れまで注入したがる」と書かれたりしますが、もしかしたらこの辺の事情が影響しているかもしれません。

積算ソフトによるかもしれませんが、25m未満と25m以上のどちらを選択しても恐らく単位は「構造物」当りに変換されて出てくると思います。

積算基準 第1編 総則 第5章 数値基準 では充てん工法、低圧注入工法、左官工法の設計表示単位はどれも数位1の「構造物」となっています。
したがって、契約表示単位は「構造物」が正解です。

補修延べ延長(m)

補修延べ延長が25m以上である場合は設計量をそのまま計上します。

補修延べ延長が25m未満となる場合は、歩掛が「構造物当たり」のものを使用するため考慮不要です。

注入材使用量(kg)

画像提供:サン・シールド株式会社 様(https://www.sunshield.co.jp/

補修材の材料ロスを含んだ数量を計上します。

注入材料の算出

積算する際には具体的な注入材量(kg)の情報が必要です。注入材量(kg)算出には、”ひび割れ深さ”の情報が必要です。しかし、これは表面的な調査では分からないため、一般的にはひび割れ幅から深さを推定する方法が取られています。

参考として、(一社)コンクリートメンテナンス協会では以下のように掲載されています。

当協会では、ひび割れ深さを以下のように考えています。
・ひび割れ深さは、コンクリート表面で測定したひび割れ幅を基に推定することとし、
 その深さはひび割れ幅の200倍とする。
・ただし、そのひび割れ深さの上限は350mmとする。
・すなわち、ひび割れ幅0.2~1.75mmの場合にはひび割れ幅(mm)×200にてひび割れ深さを算出し、幅1.75mmを超えるものに対しては、ひび割れ深さを350mmとします。

【ひび割れ注入工におけるひび割れ深さの推定について】ー (一社)コンクリートメンテナンス協会(https://www.j-cma.jp/?cn=102412)

”ひび割れ幅”と”ひび割れ延長”のみが拾われている数量では、具体的な注入材量が不明なためそのまま積算できません。発注時に追加作業が必要になります。

補修材の材料ロス率

補修材の材料ロス率については、製品によって異なるためメーカーのカタログや問い合わせなどを行って調べます。

参考として(一社)コンクリートメンテナンス協会では、HP上にて「シリンダー工法」の場合のロス率が掲載されています。

工法:シリンダー工法
・セメント系注入材:50%
・エポキシ系注入材:40%
・亜硝酸リチウム :30%
・無機系シール材 :30%

ひび割れ注入材のロス率 ー (一社)コンクリートメンテナンス協会(https://www.j-cma.jp/?cn=102412)

シリンダー工法は、注射器に伸ばした輪ゴムを引っ掛け、内側に戻ろうとする輪ゴムの力を利用して注入する工法です。コニシ株式会社の「ボンドシリンダー工法」がメジャーです。(http://www.bond.co.jp/bond/reinforce/crack/

シール材設計量(kg)

画像提供:サン・シールド株式会社 様(https://www.sunshield.co.jp/

シール材のロス率37%を見込んで計上する必要があります。
ただし、積算ソフトでは設計量を実数入力して、ロス率は自動加算される方法を取っていることが多いと思います。この場合は、計上した数量に対してきちんと計算がされているか、施工内訳を再検算することが望ましいです。

数量拾いされている計算過程を確認してください。数量拾いの時点でロス率が考慮されているのであれば、上記のように自動加算される場合はロス率を除いた数字に直して計上しなければなりません。
ロス率が二重計上とならないよう注意してください。

低圧注入器具使用量(個)

画像提供:サン・シールド株式会社 様(https://www.sunshield.co.jp/

ロスを含んだ数量とする必要があります。

注入器具使用量の算出

参考として、(一社)コンクリートメンテナンス協会では以下のように掲載されています。

注入間隔の規定に関しては、国交省やNEXCO等の土木分野では存在致しません。
エポキシ樹脂注入ですが、建築分野では添付のように、国交省が200~300mmピッチと表現しております。
したがって弊協会では4本/m、250mmピッチを一般的な目安としてお話しするケースが多いです。
セメント系注入材の場合でも、現場の経験で250mmピッチで施工することとしています。
この間隔を基本するとすることとしていますが、ひび割れ幅によって間隔を変更することもあります。
ひび割れ幅が小さいと間隔を短くしますし、ひび割れ幅が大きいと間隔を長くします。

セメント系(無機材)のひび割れ注入材の注入間隔 ー (一社)コンクリートメンテナンス協会(https://www.j-cma.jp/?cn=102412)
注入器具のロス率

注入器具に関してはロスを見込まない(つまりロス率0%)のが一般的と思います。

低圧注入工法の計算例

ここでは、低圧注入工法の計算例について示します。

積算資料 別冊に「ひび割れ補修材(低圧注入工法)」として単価掲載のあるショーボンド建設のエポキシ樹脂系ひび割れ補修材料で施工することを想定して計算します。

【計算例】
ビックス工法 ー ショーボンド建設株式会社
http://www.sho-bond.co.jp/method/067.html
(想定与条件)
 ひび割れ延長:L=200.0m
 ひび割れ幅:一律 w=0.5mm
 注入間隔:250mm間隔
 注入材料:BLグラウト100
 (ある程度進展性のあるひび割れを想定)
 注入材料のロス率:15%
 注入材料の比重:1.10
 シール材の材料:ショーボンド#101
      諸元:幅50mm、厚3mm、比重1.7
 注入器具の材料:BLインジェクター
      容量:43g

カタログなどに掲載がない数値については、ショーボンド建設に問い合わせを行って調べた数値です。

<<<注入材使用量の算出>>>

(A):注入材使用量(kg)
 =1/2 × 平均ひび割れ幅(m) × 深さ(m) × ひび割れ延長(m) × 密度(kg/m3) × ロス率
 =1/2 × (0.5/1000) × (0.5×200/1000) × 200.0 × (1.10×1000) × 1.15
 =6.325kg

ここで、注入器具の容量いっぱいに注入(43g)して250mm間隔で設置したとすると、

(B):注入材使用量(kg)
 =ひび割れ延長(m) × m当たり使用個数(個) × 注入器具の容量(kg) × ロス率
 =200.0 × (1000/250) × (43/1000) × 1.15
 =39.56kg

1/2を掛ける理由は、
『ひび割れ断面を二等辺三角形断面と近似させて考えるため』です。
表面に出ているひび割れ幅を「底辺」、ひび割れ深さを「高さ」と置き換えて考えていただけると計算過程が分かりやすいかと思います。

(A)<(B)であり、追加補充せずに注入完了できそうです。
この場合、(A)の数量を計上する考え方もあると思いますが、ビックス工法ではゴムチューブの内部圧力を利用することになりますので、容器一杯に充てんが必要なはずです。
そのため、(B)の数量を計上するのが正しいと思います。

<<<シール材使用量の算出>>>

 シール材使用量(kg)
  =シール材幅(m) × シール材厚さ(m) × ひび割れ延長(m) ×密度(kg/m3) × ロス率
  =(50/1000) × (3/1000 ) × 200.0 × (1.7×1000) × 1.37
  =69.87kg

積算ソフトでは設計量を実数入力して、ロス率は自動加算される方法を取っていることが多いと思います。ですので、この場合はロスを含まない51.00kgを入力します。施工内訳で69.87kgとされていればOKです。

<<<注入器具使用量の算出>>>

 注入器具使用量(個)
  =ひび割れ延長(m) × m当たり使用個数(個/m) × ロス率
  =200.0 × (1000/250) × 1.0
  =800個

一般に注入器具のロスは見込まないことが多いので、計算例ではロス率を0%としました。

以上で低圧注入工法の計算例を終わります。

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積算する上での注意点

ひび割れ補修工での「1構造物」の定義

ひび割れ補修工は「構造物」あたりで積算しますが、積算基準では「1構造物」の定義について以下のように示されています。

(注)1構造物とは、1橋梁や1樋門等の全体を指し、構造物の規模や橋梁の上部・下部の区分、樋門等の連数による区分は設けない。

従って、橋梁などの上部工のひび割れ補修と下部工のひび割れ補修を同時発注する場合は、数量を合算して計上することになります。
もしも、上下部で違う工法もしくは違う材料による注入を想定する場合は、計上方法にひと工夫が必要です。

補修用材料の単価

物価本には『建設物価』では公表価格として掲載があり、『積算資料』は価格掲載がありません。

一方、先に計算例を示しましたショーボンド建設の材料単価であれば、積算資料 別冊 に掲載があります。
この単価であれば、見積もりを取ることなく工事発注可能です。
ショーボンド建設は橋梁補修工事で受注額が常に全国トップの企業ですので、一般的な工法として判断してもいいのではないでしょうか。

物価本に掲載の無い工法でのひび割れ補修工事の発注を予定している場合は、工事ごとに見積もりをとるしかないかと思います。

もしも、物価本に掲載の無い工法を複数発注する予定がある場合は、年度当初に事務所でまとめて見積もりを取っておいた方が効率的です。

足場は確保できているか

ひび割れ補修工の歩掛には、足場の設置費用は含まれていません。
手の届く範囲以外のひび割れ注入を予定している場合は、足場の費用について別途計上する必要があります。

具体的には以下の選択肢があるかと思います。

(1)吊足場、脚周り足場
(2)高所作業車、橋梁点検車
(3)ローリングタワー

橋梁補修や構造物補修では(1)もしくは(2)を使うことが多いのではないでしょうか。

道路ボックスやトンネルなどでは小規模なものであれば(3)が選択肢に上がるかと思います。

ローリングタワーについて知らない方は、ググれば情報が出てきますので調べてください。
蛇足ですが、ローリングタワーは物価本に賃料掲載がありますので、こちらより単価計上します。なお、運搬費については運搬費率分に含まれる運搬費のうち”器材等”に該当するとして取り扱って良いと思われます。

道路ボックスは「トンネル補修工(ひび割れ補修工(低圧注入工法))」

令和2年度積算基準より「トンネル補修工(ひび割れ補修工(低圧注入工法))」が新設されました。

トンネル(覆道、道路ボックスカルバート等含む)で実施するひび割れ補修工は、こちらの歩掛で計上することとなります。
したがって、道路ボックスのひび割れ補修(低圧注入工法)で構造物補修工の歩掛を計上することは誤りです。注意してください。

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最後に

ひび割れ補修のバイブルは、『コンクリートのひび割れ調査、補修・補強指針 -2013- 』です。これは(一社)コンクリート工学会 が発行している専門書です。
発行してから年数が経過していますので、もしかしたら近いうちに改定があるかもしれません。

以上で、ひび割れ補修工(低圧注入工法)のまとめを終わります。

なお、今回の記事作成にあたっては、サン・シールド株式会社 様(https://www.sunshield.co.jp/)より工事写真を提供して頂きました!

大変ありがとうございました!

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ここまで記事を読んでくださってありがとうございました!

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発注者支援業界に勤務。
公共工事の円滑な事業執行をサポートするため、積算・施工管理の分野で毎日頑張っています。

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