【ひび割れ補修工】充填工法(充てん工法)

共通工

ひび割れ補修工のうち、充填工法の積算方法についてまとめました。

充填工法を積算する上でのポイントは3つあります。

それは、
「充填材の材料使用量の計算及びロス率の取り扱いを間違えやすいこと」
「そのまま積算に使える材料単価が物価本に掲載されていないこと」
「材料費の見積もりを取る場合はプライマーを含まない見積もり単価とすること」です。

充填工法は「Uカットシーリング工法」と呼ばれることが多いです。

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ひび割れ補修工

コンクリートのひび割れの補修工法には、主に以下に示す3つの方法があります。

・ひび割れ被覆工法
・注入工法
・充てん工法

これらの工法は、ひび割れの発生原因、ひび割れ幅の大小、ひび割れの進行性の有無、鋼材の腐食の有無によって単独あるいは組み合わせて用いられます。

この記事で説明するのは、充てん工法に該当する補修工法です。

注入工法については、以前の記事でまとめてありますのでそちらを見てください。

ひび割れ補修工法の選定

ひび割れ補修のバイブルは、(公社)日本コンクリート工学会が発行している「コンクリートのひび割れ調査、補修・補強指針-2013-」です。

ひび割れ補修の工法選定は、この本に掲載されている”ひびわれ補修工法の選定例”に従って決定されるのが一般的です。具体的には、ひび割れ幅で決まります。

【 適用可能なひび割れ幅 】
 0.2mm以下 → ひび割れ被覆工法
 0.2〜1.0mm → 注入工法
 1.0mm以上 → 充てん工法

補修材料についてはひび割れ部の挙動(コンクリート構造の膨張収縮や外的要因によるひび割れ幅の変動量)に応じて選択します。

ひび割れ部の挙動が小さい場合は「セメント系」が用いられることが多く、ひび割れ部の挙動が大きい場合は「樹脂系」が用いられることが多いです。

充填工法とは

充てん工法は、ひび割れ幅1.0mm以上の比較的大きなひび割れや動きの大きいひび割れの補修に適する方法です。ひび割れに沿ってコンクリートをカットし、その部分に補修材を充てんします。

充てん工法による補修を行うことで、ひび割れからの劣化因子の侵入を防止することが目的です。ひび割れ内部には補修材は到達しませんので躯体の一体化を図ることはできません。

補修方法について

ひび割れ幅が1.0mm以上の場合は、鉄筋位置までひび割れが達している可能性が高いです。
よって、鉄筋を腐食させる原因である”水分”、及び鉄筋の防錆機能を受け持つ不動態皮膜を破壊する”塩分”が到達している可能性が考えられるため、実際の鉄筋の腐食状態を確認した上で補修工法を選定します。

鉄筋の腐食状態を確認した結果、鉄筋腐食が無い場合は充てん工法を選択します。

健全な鉄筋をこれ以上腐食させないことが目的の補修工法です。
発生してしまったひび割れからの劣化因子の侵入を防止します。

鉄筋の腐食状況について試掘調査した結果、腐食している場合は断面修復を選択します。積算基準では断面修復工(左官工法)として掲載されています。
鋼材が露出するまでコンクリートをはつり、鋼材の錆落としを十分に行い、鋼材の防錆処理を必要に応じて施した後、ポリマーセメントモルタルなどの断面修復材で復旧します。
また、かぶりコンクリートの健全性が失われている場合も同様に断面修復を選択します。

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積算に必要な情報及び計算例

積算に必要な情報

ここでは、土木工事標準積算基準書 第2章 9-1 構造物補修工(ひび割れ補修工(充てん工法))について記載します。

積算する際には、以下に示す条件を選択する必要がありますので順に解説していきます。

なお、数量については土木工事数量算出要領(案)で以下のように示されています。

1-12-2 令和2年度(4月版)土 木 工 事 数 量 算 出 要 領(案) ー 国土交通省

ここで注目して頂きたいのですが、要領ではロス率について数量に「含むのか」「含まないのか」数量拾い方について示されていません。

市場には多種多様な製品があり、加えて製品によってロス率が異なることが理由なのだと思います。

設計者が数量を拾う際、使用する製品を想定してロス率を考慮した数量拾いをする場合もあれば、そうでない場合もあります。
「ロスを含んだ数量」と「ロスを含まない数量」どちらも混在していますので、積算の際は注意が必要です。

補修延べ延長 20m未満 or 20m以上

ひび割れ補修の延べ延長が20mを境に歩掛が変わります。

20m未満では施工歩掛の単位は「1構造物当り」
20m以上では施工歩掛の単位は「10m当り」

となります。

図にすると以下のイメージです。

図. 充てん工法施工費グラフ

この図から分かるように充てん工法を数mなどで少量発注するのは不経済な場合があります。せっかく発注をするのであれば、大したことないひび割れも含めて20mに達するまで数量を見込んでも施工費は変わらない積算基準になっています。

積算ソフトによるかもしれませんが、20m未満と20m以上のどちらを選択しても恐らく単位は「構造物」当りに変換されて出てくると思います。

積算基準 第1編 総則 第5章 数値基準 では充てん工法、低圧注入工法、左官工法の設計表示単位はどれも数位1の「構造物」となっています。
したがって、契約表示単位は「構造物」が正解です。

補修延べ延長(m)

補修延べ延長が20m以上である場合は設計量をそのまま計上します。

補修延べ延長が20m未満となる場合は、歩掛が「構造物当たり」のものを使用するため考慮不要です。

充填材の材料使用量(kg)

充てん材のロス率20%を見込んで計上する必要があります。
ただし、積算ソフトでは設計量を実数入力して、ロス率は自動加算される方法を取っていることが多いと思います。この場合は、計上した数量に対してきちんと計算がされているか、施工内訳を再検算することが望ましいです。

数量拾いされている計算過程を確認してください。数量拾いの時点でロス率が考慮されているのであれば、上記のように自動加算される場合はロス率を除いた数字に直して計上しなければなりません。
ロス率が二重計上とならないよう注意してください。

充填工法の計算例

ここでは充填工法の計算例について示します。

例として、コニシ株式会社のボンドE600で計算した場合の計算例を示します。

ボンドE600(カタログより) ー コニシ株式会社

【計算例】
ボンドE600 ー コニシ株式会社
http://www.bond.co.jp/bond/detail/000928006574/
(想定与条件)
 ひび割れ延長:L=30.0m
 充填材の材料:ボンドE600
      諸元:比重 1.3(カタログより)
 シーリング材の諸元:下記、参考断面
       予備計算:15.0L/100m
           ((b)0.01m×(h)0.015m×100m×1000)

<<<充填材使用量の算出>>>

充填材使用量(kg)
 = ひび割れ延長(m) × 単位当たり使用量(L) × 比重 × ロス率
 =30.0 × 15.0/100 × 1.3× 1.20
 =7.0kg

積算ソフトでは設計量を実数入力して、ロス率は自動加算される方法を取っていることが多いと思います。ですので、この場合はロスを含まない5.85kgを入力します。施工内訳で7.02kgとされていればOKです。

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積算する上での注意点

ひび割れ補修工での「1構造物」の定義

ひび割れ補修工は「構造物」あたりで積算しますが、積算基準では「1構造物」の定義について以下のように示されています。

(注)1構造物とは、1橋梁や1樋門等の全体を指し、構造物の規模や橋梁の上部・下部の区分、樋門等による区分は設けない。

従って、橋梁などの上部工のひび割れ補修と下部工のひび割れ補修を同時発注する場合は、数量を合算して計上することになります。
もしも、上下部で違う工法もしくは違う材料による注入を想定する場合は、計上方法にひと工夫が必要です。

補修用材料の単価

物価本には『建設物価』は接着剤(P.190付近)に一部の充てん材が公表価格として掲載があり、『積算資料』は価格掲載がありません。

事務所などで見積もりを取った資料がなければ、単価見積もりが必要です。

もしも、充てん工法を複数発注する予定がある場合は、年度当初に事務所でまとめて見積もりを取っておいた方が効率的です。

なお、充てんを行う際に塗布するプライマーなどの材料費用は、歩掛内の諸雑費率の部分で考慮されていますので見積もりは不要です。むしろ、「プライマーを含む」などの条件で単価見積もりを取ると、プライマー材料費が二重計上となります。注意してください。

足場は確保できているか

ひび割れ補修工の歩掛には、足場の設置費用は含まれていません。
手の届く範囲以外のひび割れ注入を予定している場合は、足場の費用について別途計上する必要があります。

具体的には以下の選択肢があるかと思います。

(1)吊足場、脚周り足場
(2)高所作業車、橋梁点検車
(3)ローリングタワー

橋梁補修や構造物補修では(1)もしくは(2)を使うことが多いのではないでしょうか。

道路ボックスやトンネルなどでは小規模なものであれば(3)が選択肢に上がるかと思います。

ローリングタワーについて知らない方は、ググれば情報が出てきますので調べてください。
蛇足ですが、ローリングタワーは物価本に賃料掲載がありますので、こちらより単価計上します。なお、運搬費については運搬費率分に含まれる運搬費のうち”器材等”に該当するとして取り扱って良いと思われます。

道路ボックスは適用外(令和2年度積算基準より)

令和2年度積算基準より「道路トンネル(覆道、道路ボックスカルバート等含む)」は適用範囲外とされました。

トンネル補修工(ひび割れ補修工(低圧注入工法))が新設された関係かと思われます。
結果として、道路ボックスに適用できるひび割れ充てん工法の積算基準は無くなってしまいました。代替する積算基準は用意されていません。
注意してください。

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最後に

ひび割れ補修のバイブルは、『コンクリートのひび割れ調査、補修・補強指針 -2013- 』です。これは(一社)コンクリート工学会 が発行している専門書です。
発行してから年数が経過していますので、もしかしたら近いうちに改定があるかもしれません。

以上で、ひび割れ補修工(充填工法)のまとめを終わります。

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