発注者積算(官積算)を行う目的

積算の基礎知識
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発注者積算(官積算)を行う目的についてまとめました。

記事の内容については主に以下に示す3つのことについて書いています。

・積算とは
・発注者積算(官積算)の目的=「予定価格」を出すこと
予定価格を定めなければならない理由

この記事は、公共工事発注にあたり発注者積算(官積算)を行う目的についてのまとめ記事としています。

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積算とは

積算とは、設計図書に記載された工事目的物を施工するために必要な工事費を算出する手法です。

歩掛(材料費・労務費・機械経費を単位当たりの構成に組み合わせたもの)もしくはパッケージ化された単価、施工単位ごとに調査された取引価格や個別の材料費用など、工事費を構成する費用を加算していくことで全体の工事費を算出します。

国や地方自治体、工法協会などによって積算基準が定められており、基本的には発注者・受注者共に同じ方法で積算を行っています。

なお、工事費を構成する費用を加算していくことを「積み上げる」と呼びます。

発注者積算(官積算)では現場条件、施工方法に応じて適切な歩掛・単価を選択しながら工事目的物を施工するために必要な費用を積み上げていきます。

後述しますが、目的は「予定価格の算出」です。

工事の精算時には現場条件に応じた契約額の変更が必要となります。この時も発注時と同様の方法で積算を行います。

工事入札者の「積算」

工事の入札参加者も積算を行います。ただし、発注者積算(官積算)とは目的が少し異なります。

工事の入札参加者が行う積算は「入札する際の予定価格を想定すること」が目的です。

また、合わせて実際に工事実施した場合にかかる費用を見込むため「実行予算」を組みます。積算額と実行予算額との関係性は簡単に表現すると以下の関係性になります。

積算額 ー 実行予算額 = 利益

利益や施工条件、配置技術者などについて勘案するほか、他の入札者が札入れする額も考慮しながら入札額を決定します。実行予算額との比較の結果、目標とする利益が確保できないと判断される場合は入札辞退します。

落札できた入札者(落札者)は契約後は工事受注者と呼ばれます。

下請け業者の「見積もり」

工事受注者が工事実施にあたり他の業者に下請負契約をして工事をさせる場合、引き合いのあった下請け業者は工事受注者(つまり、元請け業者)に対して見積書を提出します。
この見積書作成を行う際の工事費計算は、積算と呼ばれることもありますが、個別作業についての費用算出についてはそのまま「見積もり」と呼ばれることが多いです。

見積もりをする場合には、上記と同じく実際に工事実施した場合にかかる費用を見込むための「実行予算」を組みます。見積もり額と実行予算額との関係性は簡単に表現すると以下の関係性になります。

見積額 ー 実行予算額 = 利益

この関係性は工事入札者の積算と類似しています。違うのは文言だけです。
提示した見積額に対して折り合いがつけば下請負契約が結ばれます。

なお、元請けによっては見積もり根拠を明確にするため、積算基準を元にした内訳付きの見積書を求める場合もあります。

整理すると、
発注者側:積算基準など用いて積算し「予定価格を算出」
受注者側:実行予算と利益のバランスを考え「入札」or「 見積書提出」

となります。

発注者側は実行予算を作成することはなく、利益について考慮することはありません。ただし、「適切な積算」をして予定価格を設定することが求められます。

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発注者積算(官積算)の目的

「予定価格」を出すこと

発注者積算(官積算)の目的は「予定価格」を算出することが目的です。
予定価格を元に競争入札や随意契約を行います。

予定価格を算出して競争入札に付す理由は主に以下の3つです。

(1)法令や規則で決められているから
(2)予算繰りするのに都合が良いから
(3)工事発注が経済的にできるから

当然ですが、この中で(1)が最も大きな理由です。

予算決算及び会計令

予定価格について定めなければならないとされている法律は、予算決算及び会計令(通称:予決令よけつれいという勅令ちょくれいによります。

予決令では、国による歳入徴収、支出、支出負担行為、契約などについて定められています。

勅令とは、国王・皇帝・天皇などの君主が直接発する命令・法令のことです。 なお、予決令はもともとは勅令ですが、数日後に施行された日本国憲法施行後は政令と同一の効力を持つものとされています。
つまり、内閣の制定した政令と同義として扱って差し支えないと思います。

予決令は国の会計について定めている法令です。一方、県や市などの地方自治体の場合は「財務規則」や「契約規則」などで定めています。

言い回しが違う場合がありますが予定価格を定めなければならない」という本質部分は同じです。

予算決算及び会計令(通称:予決令)の内容

以下、予決令の中で予定価格について言及している部分について引用します。

(予定価格の作成)
第七十九条
契約担当官等は、その競争入札に付する事項の価格(第九十一条第一項の競争にあつては交換しようとするそれぞれの財産の価格の差額とし、同条第二項の競争にあつては財務大臣の定めるものとする。以下次条第一項において同じ。)を当該事項に関する仕様書、設計書等によつて予定し、その予定価格を記載し、又は記録した書面をその内容が認知できない方法により、開札の際これを開札場所に置かなければならない。

(予定価格の決定方法)
第八十条
第1項
予定価格は、競争入札に付する事項の価格の総額について定めなければならない。ただし、一定期間継続してする製造、修理、加工、売買、供給、使用等の契約の場合においては、単価についてその予定価格を定めることができる。
第2項
予定価格は、契約の目的となる物件又は役務について、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならない。

予算決算及び会計令|e-Gov法令検索

上記は予決令の場合ですが、アンダーラインした部分について整理すると以下になります。

予定価格価格の総額
予定価格は契約の目的となる物件又は役務について、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短などを考慮して適正に定めなければならない

予定価格を適正に定めるために行っているのが”積算”であり、適正に定めるために用いているツールが”積算基準”です。

以上より、発注者積算(官積算)を行う最も大きな目的は「予定価格」を出すためであることが分かります。

入札制度のメリット

予定価格をあらかじめ定め、入札で工事受注者を決定することは他にもいくつかメリットがあります。

事業費の見通しがつくため予算管理しやすい

通常、予定価格を超過した額で入札がされた場合は「入札不落」となり、入札者が辞退しなければ再度入札が行われます。したがって、予定価格を超えた工事発注となることが無く、事業費の見通しがついた上で契約を進めることができるため予算管理しやすいメリットがあります。

経済的な工事発注が可能

競争入札では一番札を獲得するために入札者間での価格競争が起こります。そのため、より経済的に工事発注することができます。

入札方式には一般競争、指名競争、総合評価型、公募型などその後の契約方法を含めていくつかの方式があります。

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まとめ

大事な点について再度まとめます。

○積算とは
設計図書に記載された工事目的物を施工するために必要な工事費を算出する手法です。

○発注者積算(官積算)を行う目的
「予定価格」を算出すること

予定価格を定める理由
(1)法令や規則で決められているから
(2)予算繰りするのに都合が良いから
(3)工事発注が経済的にできるから

国発注の工事契約をする際に予定価格を定めることについて決められている政令(勅令)は、予算決算及び会計令(通称:予決令)でした。

ある程度大きな自治体などは工事担当のみで契約に携わることがない方もいらっしゃると思いますが、最低限ご自身が所属している発注機関の予定価格に関する取り扱いについては文章上で確認しておくことが望ましいです。

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最後に

以上で、発注者積算(官積算)を行う目的についての記事を終わります。

積算の方法や入札制度については年々変化していますが、「予定価格を定めた上で入札により工事受注者を決める」という、大枠の発注スタイルについては今後も大きく変わることはないと予想されます。

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ここまで記事を読んでくださってありがとうございました!

それでは!

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