直接工事費についてまとめました。
直接工事費は工事目的物を施工するために直接的に必要となる費用のことです。
一般的な土木工事であれば工事費の中で最も占める割合が大きくなる費用となります。
正直なところ直接工事費についてあまり深い理解をしていなくても積算自体は可能です。
一方で、「基準を理解した上で積算している」のと「なんとなくソフトに任せて積算している」だと、両者には数年後に差が付きますので、この際一通り覚えてしまいましょう。
共通仮設費や現場管理費といった間接費についても、積み上げ分以外は直接工事費に率を乗じて算出することになるため重要な費目です。

難しい内容はありません。
最後まで見ていただければ、工事発注に必要な知識が十分に身に付きます。
直接工事費とは
直接工事費とは工事目的物を施工するために直接的に必要となる費用です。
基本となる考え方
直接工事費は工事目的物の施工のために必要となる費用を一つずつ加算(積み上げ)をしていくことによって構成されています。
基本となる考え方は
”〇〇” × ”設計数量”
です。
〇〇の部分は以下のいずれかが入ります。
・単価
・施工歩掛による単価
(施工内訳表や代価表などもこれに含まれます)
・市場単価
・施工パッケージ単価
施工パッケージは、歩掛で表現していた従来の単位当たりの施工単価に替わる新しい積算方式です。
東京都17区内で施工した場合のパッケージ化された機・労・材の標準単価を用意し、積算の際はこれに各地域ごとの係数をかけて算出します。
詳しくは国総研から出されている資料をご覧ください。
施工パッケージ型積算方式について(令和3年5月)ー 国土交通省 国土技術政策総合研究所 (http://www.nilim.go.jp/lab/pbg/theme/theme2/sekop/sekopsetsumei03.pdf)

施工パッケージは価格の透明性向上や積算業務の負担軽減を目的に導入された、比較的新しい積算方法です。一方で、下記の問題点があるため賛否両論です。
・内訳が分かりにくい。
・計算が複雑で理解できない。
(積算の不透明化。ブラックボックス化を助長)
・歩掛方式を元にした積算技術を継承する機会の減少

従前の積算方法では、盛土作業を積算する場合
「ブルドーザ敷均し」
「タイヤローラ締固め」
など作業毎に分かれた積算基準(歩掛)があり、それぞれを契約数量分計上していました。
現在は施工パッケージの導入により「路体盛土〇〇m3」だけで済んでしまいます。
直接工事費の内訳
直接工事費の内訳は材料費、労務費、直接経費の大きく3つの費用に分けることができます。
材料費
文字通り、工事目的物の施工のために必要となる材料費です。
材料費は以下の考え方が基本です。
材料費 = 数量 × 価格
標準積算基準書では以下のように記載されています。
(1)数量
数量は、標準使用量に運搬、貯蔵及び施工中の損失量を実状に即して加算するものとする。(2)価格
「土木工事工事費積算要領及び基準の運用」の改定についてー国官技第359号(令和6年2月28日付け)(https://www.mlit.go.jp/tec/koujisekisan.html)
価格は、原則として、入札時(入札書提出期限日)における市場価格とし、消費税等相当額は含まないものとする。設計書に計上する材料の単位あたりの価格を設計単価といい、設計単価は、物価資料等を参考とし、買入価格、買入れに要する費用及び購入場所から現場までの運賃の合計額とするものとする。

覚えておいて頂きたい点は以下の2点です。
①数量にはロス率を含むこと
②価格には運搬費用を含むこと
労務費
労務費は、工事目的物を施工するために必要になる労務の費用です。
労務費 = 所用人員 × 労務賃金
労務費は以下の考え方が基本です。
(1)所要人員
所要人員は、原則として、現場条件及び工事規模を考慮して工事ごとに査定するが、一般に過去の実績及び検討により得られた標準的な歩掛を使用するものとする。(2)労務賃金
「土木工事工事費積算要領及び基準の運用」の改定についてー国官技第359号(令和6年2月28日付け)(https://www.mlit.go.jp/tec/koujisekisan.html)
労務賃金は、労働者に支払われる賃金であって、直接作業に従事した時間の労務費の基本給をいい、基本給は、「公共工事設計労務単価」等を使用するものとする。

覚えておいて頂きたい点は以下の2点です。
①所要人員の計算 =「標準的な歩掛」を使用する
②労務賃金 =「公共工事設計労務単価」を使用する
直接経費
直接経費とは工事を施工するために直接必要となる経費のことです。
具体的には以下の3つとされています。
・特許使用料
・水道光熱電力料
・機械経費

この中でも、直接経費の中で大きな部分を占めるのが「機械経費」です。
機械経費
機械経費については以下に基づいて積算するとされています。
(3)機械経費
「土木工事工事費積算要領及び基準の運用」の改定についてー国官技第359号(令和6年2月28日付け)(https://www.mlit.go.jp/tec/koujisekisan.html)
機械経費は、工事を施工するために必要な機械の使用に要する経費(材料費、労務費を除く。)で、その算定は請負工事機械経費積算要領に基づいて積算するものとする。

機械経費は歩掛や施工パッケージに内包した形で計上されることが多く、工事費内訳の表に出てくる機会はほとんどありません。
機械経費については以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
水道光熱電力料
水道や電気料金などの光熱費に関わる経費のうち、使用料についてはここに含まれます。
(2)水道光熱電力料金
「土木工事工事費積算要領及び基準の運用」の改定についてー国国官技第359号(令和6年2月28日付け)(https://www.mlit.go.jp/tec/koujisekisan.html)
水道光熱電力料は、工事を施工するために必要な電力、電灯使用料、用水使用料及び登記料等とするものとする。

ややこしいのが、共通仮設費の役務費との兼ね合いです。
これが理解出来れば積算上級者です。
以下のように覚えてください。
電力、用水の基本料金 = 役務費積み上げ
電力、用水の使用料金 = 直接工事費

さらに、上下水道料金については「処分費等の取扱い」の3%ルールの適用になります。
間違わないように注意が必要です。
水道料の積算の落とし穴
用水費が工事目的物の施工に必要になる場合は、直接経費ではなく”材料費”扱いとするのが適切と考えられる場合があります。
(例えば薬液注入や高圧噴射撹拌工法など)
どのような場合かというと、グラウトの練り混ぜ水など水そのものが工事目的物の一部となる場合です。

この場合は3%ルールを適用しないことが適切な積算と考えられます。
ただし、全量が工事目的物の一部になるとは限らず、削孔用水や機器洗浄などにも必要になってくる場合が大半かと思います。
この場合の取り扱いについては各所属の方針を確認しておくことがお勧めです。
特許使用料
工事積算において、特許料の計上をする場合は直接工事費に計上します。
(1)特許使用料
「土木工事工事費積算要領及び基準の運用」の改定についてー国官技第359号(令和6年2月28日付け)(https://www.mlit.go.jp/tec/koujisekisan.html)
特許使用料は、契約に基づき使用する特許の使用料及び派出する技術者等に要する費用の合計額とするものとする。
特許料については発注時に要否が不明なことも多いかと思います。
計上の要否が不明確なまま発注することになり、自分が「法令違反状態で工事を発注をすることになるのではないか」と不安な思いを持たれる方もいらっしゃるかもしれません。
特許料についての約款上の記載
実は特許料については約款でフォローが手厚く記載されており、法令違反で工事完了がされないように配慮されています。

約款についてよく分からない場合は下記の記事で詳しく解説しました。参考にしてください。
(特許権等の使用)
公共工事標準請負契約約款(令和4年9月2日改正)ー(https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000092.html)
第八条 受注者は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権その他日本国の法令に基づき保護される第三者の権利(以下「特許権等」という。)の対象となっている工事材料、施工方法等を使用するときは、その使用に関する一切の責任を負わなければならない。ただし、発注者がその工事材料、施工方法等を指定した場合において、設計図書に特許権等の対象である旨の明示がなく、かつ、受注者がその存在を知らなかったときは、発注者は、受注者がその使用に関して要した費用を負担しなければならない。
理想としては特許料の要否について明確な根拠を持った上で積算するのが理想ですが、そうではない場合は発注時から計上しなくても大丈夫です。
受注者からの協議に応じて、特許料について変更契約すれば問題はありません。
上記約款文面より、対応は以下のどちらかになります。
【特許料を計上する場合】
・設計図書に特許権などの対象である旨の明示をする
【特許料を計上していない場合】
・受注者から協議があった場合、費用負担する
要否について不安な場合は、「不明確なため〜」という条件明示をしておき受注後に協議対象とすることをおすすめします。

【工事受注者さん向けの情報提供】
上記約款より、計上していなかった特許料について協議があった場合は発注者側は費用負担をする用意があります。
協力会社から特許料についての問い合わせがあった場合は、費用負担についての協議を発注者側に上げてください。
また、工事の入札時点から特許料が必要であることが明らかである場合は質問回答書で回答を得ておいた方が良いかと思います。
最後に
以上で、直接工事費についての記事を終わります。
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