安定処理工の積算

土工
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安定処理工について、積算する際の注意点をまとめます。

セメント系や石灰系それぞれの特徴の説明や、積算する際の固化材のロス率についてまとめました。

固化材の特性や後述する配合設計などについては、安定処理に限らず他の地盤改良全般に出てくる項目です。参考にしてみてください。

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安定処理とは

安定処理とは聞き慣れない言葉ですが、『土が軟弱でそのままでは種々の用途に適さない場合に、セメント系や石灰系の固化材を添加混合して、土の強さ、安定性、耐久性などを向上させること』を言います。

土質改良と同義として使われることが多い言葉ですが、主に表層付近の軟弱土の改良に限って使われます。

表層混合処理=浅層改良=安定処理と思って頂いて良いかと思います。
ただし、安定処理は積算基準上では”土工”に記載されています。

通常は使えない軟弱土でも、安定処理して使うことにより主に以下のメリットがあります。

・残土となるはずであった軟弱土が使えるため、残土が減る
・現地土を使うため、購入土砂の運搬費がかからず経済的

ただし、現地土は千差万別であり土砂の”粒度”と”含水比”で性状が大きく変化します。

一般に、細粒分を多く含む土、含水比が多い土ほど目標の土の強さを得るために多くの固化材が必要になります。

あまりに多量の固化材が必要なのであれば、購入土を使用した方が経済的になる場合もあるでしょう。
反対に、設計で求めている強度以上にガチガチに土を固めてしまっても、余分に固化材が使用されることになるため不経済です。

安定処理を実施するためには『現地土を使った予備検討』が必要です。
具体的には、以下の項目です。

(1)現地土に適した”固化材”
(2)現地土に適した”添加量”

求める強度に応じた(1)と(2)の最適な組み合わせを見つける必要があります。

これを配合設計といいます。

配合設計は通常、現地土を採取し室内配合試験を行います。配合設計を積算計上する時の注意点は下の記事をご覧ください。

設計の段階で現地土を使って配合設計をした上で発注することが理想です。

一方で、現地状況の都合などの理由から、仮の添加量で積算しておき、精算時に設計変更することもあるかと思います。

固化材の紹介

安定処理工や地盤改良工で現地土に添加する固化材は、主に”セメント系”と”石灰系”の2つがあります。

それぞれ特性が異なるため、工事発注の際には理解した上で積算することが望ましいです。

セメント系固化材

もともとは、建設資材として市場にある土質改良材は普通ポルトランドセメントだけでした。

一方で、

高有機質土やヘドロ(泥土)を改良したい
・産業廃棄物級の泥土を効率的に処理したい
・発がん性物質である六価クロムの発生量を抑えたい

といった社会的要求から、1970年以降にポルトランドセメントの性能を工夫した特殊セメントとして製造され始めたのが「セメント系固化材」です。

セメント系固化材はポルトランドセメントを主成分としており、天然の石灰石、粘土、ケイ石、酸化鉄原料を主原料としています。

なお、「セメント系固化材」は改良目的に応じてセメントの特定成分や粒度の調整をしているため、JISの「セメント」からは外れます。

強度発現はセメントの水和反応を利用します。
ポゾラン反応硬化により、長期に渡って強度増加します。

どちらかというと、砂質土やに対する改良効果が高いです。

土を”固める”というイメージでOKです。

石灰系固化材

石灰を母材に複数の有効成分や、セメントなどが添加された固化材です。日本石灰協会によると、生石灰が50%を超えて配合されているものを”石灰系固化材”と呼びます。

強度発現は、主に生石灰が水と反応して発熱する作用を利用して含水比を下げます。
セメント系固化材と比較すると、ポゾラン反応による長期に渡った強度増加は低いです。

比較的短期間に含水比を低下させて塑性指数を下げる(コンシステンシーを改善する)ことができるため、粘性土やヘドロの安定処理などに使われることが多いです。

”水分を飛ばす”というイメージでOKです。

普通ポルトランドセメント

材料単体では、土質改良材としては最も安価です。

現在でも高炉セメントと共に配合設計の比較検討に加えられる事はよくあります。

ただ、添加量が多くなる場合は「セメント系固化材」の方が改良効率がよく、添加量が少なく経済的であるため、普通ポルトランドセメントが選ばれる機会は少ないと思います。

添加量が多くなるということは同時に六価クロムの発生量も多くなるため、目標強度に達する添加量では環境基準値(0.05mg/L)を超えてくる可能性も高くなります。

用途に応じたバリエーション(特殊土用、発塵抑制など)

・通常のセメント系固化材では改良効果が出にくい高有機質土に対応した高有機質土用
・火山灰質土やシルトなどにも対応した特殊土用
・テフロンなどの添加により、改良時の粉塵発生を抑制した粉塵抑制型

など様々な用途に応じた製品が各メーカーから製造されています。

高機能なものはその分コストがかかりますので、経済性も考えながら検討する必要があります。

現地土との相性もありますので、検討する各固化材ごとに配合設計が必要になることに注意してください。

住宅地での工事では、粉塵抑制型を検討することをおすすめします。

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積算する際の注意点

スタビライザ

出典:スタビライザーでの施工 ユースタビラー総合カタログ 宇部三菱セメント株式会社

スタビライザが使用可能な場合は、こちらで積算します。

スタビライザは機械に攪拌混合用のローターが付いており、これを回転させながら移動することで連続的に現地土と固化材を混合させることができます。

日当り施工量がバックホウ混合よりも大きく取ることができるため経済的です。

表層から深さ0.6mまでが対応可能であり、ディープスタビ工法に対応した機械であれば深さ1.2mまで施工可能です。それ以下は、一般的なスタビライザでは施工が困難です。
積算基準においても『混合深さが1mを超える場合や2層以上混合する場合は別途考慮する』とされています。

積算する際の注意点について、以下に記載します。

・100m程度の仮置き場〜現場の現場内小運搬を含む
・スタビライザ施工の混合回数は、消石灰・セメント系は『1回』、生石灰は『2回』を標準とする
・処理深さ『0.6m以下』『0.6mを超え1m以下』どちらの場合でもスタビライザの機械質量は20tを超えるため建設機械の貨物自動車による運搬が必要です。

施工量によっては、建設機械運搬費がかからないバックホウ混合の方が経済的になる場合があります。注意してください。

生石灰が2回混合するのは、1回目の混合で生石灰の吸水・発熱作用によって処理対象土の含水比を低下させ、2回目の混合を行うことで対象土を均質な状態にするためです。

バックホウ

出典:バックホウでの施工 ユースタビラー総合カタログ 宇部三菱セメント株式会社
出典:ロータリー式撹拌機での施工 ユースタビラー総合カタログ 宇部三菱セメント

現場条件によりスタビライザによる施工ができない路床改良工事、及び構造物基礎の地盤改良工事ではバックホウ混合で積算します。

実際の施工では、バックホウのバケット部を『スケルトンバケット』や『混合装置付きバケット』に交換して施工されることが多いかと思います。

バックホウ混合はスタビライザよりも日当り施工量が少ないものの、適用範囲が広いです。

積算する際の注意点について、以下に記載します。

・50m程度の現場内小運搬を含む
・固化材はセメント系のみ
・路床改良工事では次のいづれかに該当する現場条件で適用可能
 (1)施工現場が狭隘きょうあいな場合
 (2)転石がある場合
 (3)移設できない埋設物がある場合

(1)〜(3)に該当しない場合はスタビライザ混合により積算します。
なお、固化材はセメント系のみであることに注意してください。

ロス率の考え方

積算基準では『「固化材100m2当たり使用量」は、実数量(材料ロスを含んだ数量)とする』とありますが、配合設計では通常、下記の現場要因を見込んであらかじめ割増して設計しています。

・施工機械と室内配合試験用混合機械の撹拌性能による混合程度の相違
・養生温度の相違
・改良区域での土質のばらつきや含水比の相違

割増量の考え方は、配合設計で評価する試験方法により変わります。

一軸圧縮試験で評価する場合

構造物の基礎や、液状化対策、仮設道路、路盤改良などでは一軸圧縮試験により評価します。

下記、3点を結ぶ直線を描くために固化材添加量(kg/m3)を変えて一軸圧縮試験を行います。

引用:P.110 セメント系固化材による地盤改良マニュアル第4版 (一社)セメント協会

通常は50・100・150kg/m3、添加量が少なくて済むことが予想される場合は、30・60・90kg/m3としたりしますが、この辺の感覚は配合設計者の経験次第です。

図-4.4に記載がありますが、室内目標強度=設計強度÷強さ比です。

この強さ比の部分で現場でのロス率が考慮されています。

ですので、積算の際に別途にロス率をかける必要はないかと思います。

引用:P.111 セメント系固化材による地盤改良マニュアル第4版 (一社)セメント協会

強さ比については、上記表に示す様に「混合方式」「改良の対象土」「施工機械」の組み合わせで変わります。

通常は、ここで示されている強さ比の中央値とすることが多いと思います。なお、実施工の際に配合設計と異なる施工機械で安定処理する場合は再計算が必要になります。

CBR試験で評価する場合

路床改良の場合はCBR試験により評価します。

下記、3点を結ぶ直線を描くために固化材添加量(kg/m3)を変えてCBR試験を行います。

引用:P.111 セメント系固化材による地盤改良マニュアル第4版 (一社)セメント協会

通常は50・100・150kg/m3、添加量が少なくて済むことが予想される場合は、30・60・90kg/m3としたりしますが、この辺の感覚は配合設計者の経験次第です。

CBR試験の場合は目標CBRが出る添加量に割増率をかけるという手法を取ります。

この割増率の部分で現場でのロス率が考慮されています。

ですので、一軸圧縮試験の場合と同じく積算の際に別途にロス率をかける必要はないかと思います。

引用:P.111 セメント系固化材による地盤改良マニュアル第4版 (一社)セメント協会

割増率については、上記表に示す様に「処理厚さ」と「土の種類」で変わります。

通常は、ここで示されている割増率の中央値とすることが多いと思います。

コーン指数で評価する場合

埋戻しなどに用いる発生土改良の場合は、コーン指数により評価します。

コーン指数の判断基準としては国土交通省の通達で「発生土利用基準について」という通達が出ていますのでこれを見てください。

また、このサイト内でも「作業土工の考え方」に関する記事内で解説しておりますので、参考にしてみてください。

最少添加量について

補足情報ですが、添加量の設定にあたっては、現場における均一な混合が確保できる最少添加量についても考慮する必要があるとされています。

セメント協会では 50kg/m3

石灰協会では 30kg/m3

とされています。

固化材100m2当り使用量の計算方法

積算する際には、固化材の100m2当り使用量に換算しなければいけません。

ここでは、仮に

・設計添加量 80kg/m3
・改良厚さ 60cm

だった場合の計算方法を示します。

(固化材の100m2当り使用量(t/100m2))
=(100m2)×(改良厚さ)×(設計添加量)÷ 1000
= 100 × 0.6 ×80 ÷ 1000
= 4.8 (t/100m2)

となります。

設計添加量○kg/m3をそのまま入力しないように注意してください。

固化材単価について

物価本を「セメント系固化材」で索引するとすぐに見つかるかと思います。

施工パッケージでは固化材の荷姿を『フレコンバッグ』を想定しているため、計上する材料単価においてもフレコンバッグ(1トンパック)の単価を計上します。

なお、積算基準には使用後のフレコンバッグの処分費用の取り扱いについて明記されていませんが、この取り扱いについては各所属で取り決めがあればそれに従ってください。

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最後に

安定処理など地盤改良では(一社)セメント協会発行の「セメント系固化材による地盤改良マニュアル」が業界のバイブルとなっています。

安定処理や地盤改良工事の工事監督をするには必須の本です。
おそらく既に事務所の本棚にあると思います。

もしなければ、事務所ごとに1冊購入されることをオススメします。
現在は第5版が出ています。

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ここまで記事を読んでくださってありがとうございました!

それでは!

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